旅の途中

雨の夜と・・・

 

珍しくホテルのベッドにありついた。

シルドラ・インのほの明るい照明は、女性陣のお気に入りだ。パブ、スターレットの料理が美味しいのもポイントだとかで、ティファがマスターにレシピをもらったと、喜んでいた。

人間がどんなに星をよごして、恩知らずな行為を繰り返しても、星は何も言わない。むしろ、慈しむかのように惜しみなく愛を注ぐ。

今夜は雨降りだ。

私たちが流した赤い血を、洗い流すかのように
私たちの胸の痛みまでをも、拭い去るかのように
星が雨を降らせている。

 「さっぱりしたぁ〜、なんか生きかえったわよ」

黒髪をタオルにくるりと包んで、バスローブ姿のティファが戻ってきた。

「おっ、湯上り美人だね!」

ユフィもエアリスもすっかりくつろいで、スプーンを口に運んでいた。

「アイス、あるわよ。ナナキにもらったの。名物だって」

エアリスが冷蔵庫をかき回してカップを取り出した。

「あ、ありがと。それより、何か飲みたいわ」

スポーツドリンクを取り出すと、腰に手を当てきゅ〜〜〜〜っと350ml缶を一気のみした。

「ふ、おいし。さてと、」
缶ビールが登場した。

「ここのフライドチキンって、おいしいのよ」
「へへへ、スモークサーモン、くすねてきたし、」
「やるわねぇ、さっすがくノ一!」
「大丈夫?未成年でしょ。アルコールとかニコチンとか、控えたほうがいいわよ、おっきくなれないんだから」
「そうそう、ティファみたいにナイスバディになれないわよ」
「あらあら、エアリスだって脱ぐとすごいじゃない、見えたわよさっき」

2人の間にばちばちと火花が散るのを、ユフィは確かに目撃した。  
「あ、アタシはしゅわ〜のジュースが好きなんだ。こっちの黒いのがいいな」
「ま、チョットぐらいなら勉強になるわ。」
「そうね、一口あげるね」

話がついたところで各自ぷしゅーとリングをたてた。

「じゃぁ、」
「うん」
「おーけー」

かんぱーーい!

くぴくぴ・・・

………しばしの沈黙………

「うぁーーー」
「きっくぅーーー」
「げぷーー」

「やーれやれ、今日もきつかったわねぇ、」
「お疲れ様でした、このごろ出ずっぱりだからエアリス、もうレベルどこまで行ったの、50?」
「53、かな」
「すご・・、アタシなんか41だよ。つまんないったりゃありゃしない」
「デザートサハギンなんか、4匹まとめてブリザガで蒸発しちゃったわよ」
「こわ・・、たのむから混乱だけはしないでよね」
「大丈夫よ、ほら」

左手をげんこつにすると、ユフィの鼻先に突き出した。中指に分厚い【やすらぎの指輪】が輝いていた。

「へぇ、誰にもらったのかな???」

ティファがにやりと笑った。

「別にもらったわけじゃないわ。だって13号よ、これ」

【かばう】マテリアで、打撃攻撃からは守られても、いちいちコンフュを受けていては、パーティーはお手上げだ。

「だから『頼むからこれをつけてくれ』って・・・預かったのよ」

シドからじゃなかったら1000倍は嬉しかったわとエアリスはほっぺたを膨らました。

「そんなこと言ったらオジさんかわいそうだよ、」
「あれあれ?ユフィちゃん、ジェラシーかな?」
「ユフィって、・・・渋好み!?」
「ちがーーーう、オヤジオヤジ、大オヤジじゃん!!!」
「あははは、そこまで連呼しなくてもいいって。」
「くしゃみしてるよ、今ごろ」

「でもさぁ、シドってときどき、」
「してるよね、」
「してる、って何?を?」
「あれ、知らないの?バレットのことばかり気にしてるからわかんないんでしょ」

麒麟の絵柄が珍しい缶を取り落としそうになった。

「ちょ、ちょっとぉぉ、何よそれ!!?」
「さっきだって、あつくてあつくて、ねぇ、エアリス」
「そうよ、息が止まりそうだったわ、どうなってんの?」

アルミ缶をどん、とテーブルに叩きつけた。缶は無残にも握りつぶされた。

「一体いつ、何が、どうなったっていうの?心当たりのかけらもないんですけど?」

こめかみがぷるぷる震えていた。しゅわっちゅ、と、ソファーの陰に飛びのいてユフィはこわごわ2人を伺った。無邪気に笑うエアリスが続けた。

「きゃ〜〜〜、そのペンダント、説明していただけますぅ?」
「【星のペンダント】がどうかしたの?」

胸の谷間に挟まったペンダントトップを引っ張り出してぶらぶらさせた。
暴れる様子もないので、ユフィはほっとしてチキンに手を伸ばした。

「装備するだけでどうしてあんなに見つめ合うんだ?」
「はぁ〜?」
「バレットさん、泣いてませんでしたぁ?」
「止まり木で2人、何話してたんだよ?」

何だ、さっきのことね。
スモーク・サーモンをつるりと頬張って、2本目はモルツ缶をぷしゅーした。
ごくごくごく、

「マリンの話になったのよ。だから・・・」

エアリスの顔にもふと影が差した。

「慰めていたの?」
「ちょっとね。明日は私、先発でしょ。で、バレットと引継ぎしてたの。装備を受けとって、ペンダントつけたらバレット、急に落ちこんじゃったのよ」

バレットはティファにだけは心を許しているようだ。心細いとき、不安なとき、迷ったとき、彼の話を聞くのはいつもティファだ。先ほどもバレットは苦しい胸のうちをティファに打ち明けていた。

――マリンがそうやって形見のペンダントをかけるところを、オレは見ることができるのかな?
・・・どうしたのバレット、気弱じゃない。
――それより、あんなに懐いているのに、本当を知ったら、マリンのやつ、
・・・マリンは賢い子よ。そりゃ驚くでしょうけど、わかってくれるわよ。
――オレには本当を伝える勇気があるかどうか、
・・・今からそんな先の心配してちゃ持たないわよ。
――マリンに会いたい、いや、会うともう戦いに戻れないかもしれない、
・・・しっかりしろ、バレット!私のすきな強いバレットはどうしたの?
――どうしたらいいのかわからないぜ
・・・私も一緒にいるから、ね、途中下車できないんでしょ。

バレットの次にマリンとつきあいが長いティファは、彼の苦悩が他人事に思えないのだ。

「そっか、てっきり愛を語り合ってるのかと思ったわ」
「やれやれ・・・バレットは見た目がああだから、誤解されてること多いのよね。」
「そっか、照れやさんよね、くすっ」
「恥かしがりやだし」
「そうなのか、怖いオジさんだけど」
「あんたは、態度が悪いからよ」
「しつけ、ね」
「子供扱いも程ほどにしてくれよぉ!ちょっと出っ張ってるからってさぁ」
「あははは、悔しけりゃほぉら!」

胸をせり出して見せる。

「真似してみるぅ?」

下ろした髪をうなじごしに持ち上げて品を作って迫り、ユフィを押し倒してしまった。ところ構わずくすぐられてユフィは足をバタバタさせて抵抗した。

「ぎゃはははははははは、頼むからそこはだめだよーーーー」
「それくらいで許してあげればぁ。もう、ユフィのパンツなんか見たってちっとも嬉かないわよ」
「あはは、早くおへそ直して。飲みなおそ」
「うーーーもぉーーー。ハムスターのパンツ、自信あるのにぃ」

またまたかんぱーーい。
ぐびぐびーー

「で、何で?バレット、落ちこむのさ?」
「・・・・・・・・・」

ティファはエアリスに目配せをした。

「誰にだって触れられたくないこと、1つや2つ、あるものよ。」
「マリンはバレットの命なの、忘れちゃダメよ。」
「そうね、シドをからかうのと同じにしちゃいけないからね。」
「ふぅ〜ん、よく知らなかったんだ、アタシ」

「で、シドが何してるの?」
「デンワよ、で・ん・わっ」
「何時の間に買ったんだろうね?自分だけさぁ」
「やっぱり、シエラさんに?」
「決まってるじゃない!ふっと姿を消したと思ったら、しれっとした顔で帰ってくるのよ。すっごくご機嫌になってるから、わかっちゃう。だからほら、この前も、すっかり暗くなったのに『もう少し進もうぜ』なんて、言ってたでしょ。」
「そうそう、アタシなんかくたくただったのにさぁ」
「【圏外】だったからね、シド、都合悪かったのよきっと」
「じゃあやっぱり、奥さん?」
「そこが難しいところよね、私の睨んだところだと、」
「エアリス、ロケット村でシエラさんから頼まれたとか言ってたわよね」
「ざーんねん、アタシ話してない!」
「うん、シドって、もしかして帰りたがってるかもしれないわよ。バレットとかあなたとかヴィンセントなんかと違って、とことん神羅とやりあわなくちゃならない理由、ないでしょ。」
「・・・・・・(私もない)」
「それに待ってくれている人もいるし、か。」
「そうそう、あんまり待たせてると、嫌われたらどうしようってね、」
「だから、デンワかけるのか!」
「それに誰かに取られちゃうかもしれないでしょ」
「誰かにって、?」
「そこまで知らないわよ、シドに聞いてみてよ」
「とぼけるよ、きっと」
「奥さん、かぁ・・・」

3人沈黙

「ねっ、ヴィンセントと、話したことある?」
「あれ?そう言えば、」
「でしょ〜、私なんか、ヴィンがまばたきしたところも見たことないわよ。」
「エアリス、あなた、そんなにしげしげとヴィンの顔を見てるわけ?」
「だって女の私が見とれるぐらい、きれーなお肌よ。」
「あははは、きっと棺桶のなかで長くいたから白くなったのよ、うん。」
「やっぱり紫外線は女の敵、ってことね」
「あんたも若いからっていつもすっぴんで飛び回ってたら、今にシミになるんだからね!!」
「ティファさーん、からまないでよぉ」
「なによぉ、やけに静かじゃない?ちゃんと呑んでるの?」
「自分でダメって言っただろー?酔っ払ってるよ」
「ビールの2缶ごときで酔ってたまるもんですか!!ほら、お勉強ですよ!」

ぷしゅ、ぷしゅー
自分は3本目を、ユフィには135ml缶を持たせた。

「ちょ、ちょっと、エアリス助けてぇぇぇ・・・」
「ティファさんに逆らっちゃだめなの。素手で一番強いのはティファさんよ、はい美味しいわよ」

スモークチーズを持たせてやった。

「ほら、か・ん・ぱ・いっ!」
「え〜〜〜ん、ヴインたすけて〜〜、あんたのせいなんだからぁ〜〜」
「んでもってヴィンに助けを求めるとはどういうことかな?説明なさい!」
「あら、ユフィその腕輪は?」

【アダマンバングル】 防御力93

「その腕輪、ヴィンがしてなかった?あれぇ?」
「ちょ、チョコボの腕輪と取り替えたんだよ。彼が言い出したんだもん。」
「かっ!?」
「聞き間違いかしら?【彼】って言わなかった?」
「代名詞じゃん!HEだよ、HE! アタシだってそれぐらい知ってるよ、悪いいかよ?!」
「ははぁん、やっぱり渋好みですねーー」
「ちがうもん、ヴィンじゃないもん!」
「じゃ、だぁれ?」
「ぐっ、」
「ひっかかったーー!」
「2人とも、おかしいよ!!」

ドアの向こうにヴィンセントが立っていたことを知るものはいない。ユフィの悲鳴を聞きつけて、僅かに開いたドアの隙間から見てはならないものをあれもこれも見てしまい、小鼻を押さえ走り去ってしまった。

娘達の酒盛りはまだまだ続く、まだまだ、まーだまだ。