Challange Cooking

 

ゆっくりしていってね

このクッキー、おいしい

たくさんあるわよ、

もらっていってもいいかな?

いいわよ、どうぞ。クラウドさんにもね

「あ?は!アリガト、クラウド喜ぶよ…さすがにこたえてるらしくて、
ティファが行っちゃってから、ロクに食べてないんだ」

「まあ、失恋してもおなかだけは空く年頃なのに」

「ちょっと目を離すと下向いちゃって。ぶつぶつ言ってるか、ぼーっと、はいつもだけど、してるし。さみしそうかなって思えば、急に怖い顔するんだ」

「ユフィさん、何か美味しいものを作ってあげたらどうかしら」

「あ、アタシ?無理だよ〜、そんなの」

「一緒に作りましょう、私と。このままだと彼の体が心配だし」

「教えてくれる?」

「大したものは作れないけれど、そうね、気持ちのこもったものを作りましょう」

 

 

とんとんとんとん、しゃかしゃかしゃか、ふつふつふつ、

「…でさあ、アタシひとりで行っても…アレだし。ロープウェイに乗るんだって、きつそうだから。シドに送って、なんていったら怒られそうでしょ。
 だったら、ちょうどこの預かった山チョコボでね。前に行ったことあるって言うから、クラウドつれて……」

じゅわぁぁぁ、

「よく見ててね、すぐに固まっちゃうから」
「おーけー、」

「なんか気になるのよね。村に置いてくとさぁ、まるで置き去りにするみたいだし。帰ってきたら、きっと出かけたときのまんま、膝小僧抱えてすわってそうで」

「うんうん、そうに違いないわ」
「シエラさんも結構言うねー。アタシは平気だよ、ひとりでも。でもねぇ、クラウドがさぁ…楽しい空気にひたったら、気分も少しは晴れるかなって思うわけよ」

「いいわよ、火、止めた?」
「おっ、できた!」
「じゃ、次はこれを…」
「シュウマイの皮なんて、うちでも作れるんだ…」
「簡単よ、包み方がおもしろいの」
「あは、お店のと同じだ!」
「艇長の大好物よ」
「シエラさんて、シドのことなら何でもお見通しなんだね」
「そんなことはないわ…、お互い違う人間だもの、わかるところもあるけど、わからないところのほうが多いわ」
「へーえ、一緒に暮らしててもそうなんだ」
「まあ、上手にできたわね、お湯が沸いてきたわよ」

 

ふつふつ、しゅわぁあぁあぁ


「ちゃんと言わないから、よりによってバレットなんかにティファ取られちゃうんだよ。エアリスのことばっか考えてるし。時々、ぶつぶつ言うし。こお、切り替えってーのかなあ、どっかで割りきっちゃってさあ、…なんせもお終わったんだし。忘れるんじゃあなくって…ね。 いーじゃない、たまにはこお、ぱーーーーって。 いつもいつも 下ばっかり見てるんじゃ、ティファじゃなくてもヤになるよ。アタシだってそれぐらい、わかるんだからね」

「すごいわね、ユフィさんあなた、オトナよ」
「そうかな?へへ、照れるよ」
「あらら、いけない!忘れてた!」
「枝豆だね…任せてよ、むしるんだろ」
「茹でる前にお塩で、」
「前に教えてくれたよね」
「じゃ、お願いね。急がないと艇長帰ってくるわ」

 

とりたてて何というわけではないが、「食卓を囲む」と和やかなムードになる。ただし、ひとりだけ「浮いている」のは否めなかったが。

「まあいいってことよ、やつは失恋中だ。オレ様は楽しいぜ、やかましいとも言うけどな」

 

ほんとうにクラウドの食の細さにはびっくり。育ち盛りの21歳とはとても思えない。

「でも、せっかく作っても、残してばっかじゃ…がっかりだな…」
料理のたびに傷テープの増える手を眺めてユフィが溜息をつく。

「いつかきっとユフィさんの気持ち、伝わるわよ」

カップを並べて、シエラは食後のコーヒーを立てる。

「そうかなぁ…え!?あ、アタシ、そんなんじゃなくって。やだ!シエラさん、違うって!!」

 

「おっ、こっちは賑やかじゃねぇか」
隣の部屋で【チョコボ育成マニュアル】を見ていたシドが戻ってきた。
「な、なんでも!」
白々しく食器をふきふきするユフィ。生成りと緑のチェック柄の可愛いクロス布がなぜか気に入っているらしい。
「くすくす…」
持っていたクロスを振りまわしてユフィが大袈裟に言った。
「ちがうんだから!!クラウドには海チョコボを育てるのに、どーしても手伝ってもらわないと困るんだって!」

ぼってりした厚手のコーヒーカップに良い香りが満ちる。

「そうよね、元気だしてもらわないと困るわよね」
言いながらシドにカップを手渡す。
「そ、そう。そうなんだって」

マニュアルをプリントアウトして、クラウドもコーヒーの香りに誘われるようにダイニングに戻ってきた。
「どうした?ユフィ」

「はっ!」
棚に片付けようとしていた大皿で顔を隠すユフィ。

「クラウドさん、ヒソヒソ…」

目を丸くしたクラウド、美しい碧の瞳にユフィが映った。

「ごめん、ユフィ。知らなかったから…美味しかったよ、少ししか食べなくて 悪かった…」

シエラのやつめ、目が笑ってるぞ。怪訝な顔のシド。

 

 

 

「どうも、ごちそうさまでした」
「はい、おやすみなさい」
ユフィがクラウドの腕を引っ張って何か話している。きっとチョコぼうに行こうとか騒いでいるのに違いない。

振り返るとまだ2人は玄関にいて見送っている。
シドが肩を抱いている。
あんなにきまっているのに、シエラさんはシドの何がわからないんだろう、アタシにはそれがわからないや。

 

 

 

「おまえ、さっき何て言ったんだ?」
「え?あのね、今日のお料理はユフィさんが随分がんばったのよって」
「それだけか」
「ええ、そうよ」
「うーん、たしかに男は美味いメシのところに戻ってくるからなぁ…」
「ふふふ…」
「けど、今日のはお前の味つけだったぞ?」
「恋する乙女の努力よ」
「はぁ〜なるほどな、たいしたもんだ」
「ユフィさんたら、お料理ペケだったのよ、信じられる?」
「こりゃ、海チョコボ誕生の日も近いな」