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自虐的な笑みを浮かべてしまう
相手を倒す毎に、威力を増す頼もしい銃
怪しく光るマテリアは自分の瞳と同じ赤

「もし、資料が正しければ・・・」
独り言すら、洞窟に反響して自分に襲いかかってくるような錯覚にとらわれる。
一つ目の分岐点で、右に進むのだ。
するとすぐに二つ目の分岐点に出る。
「待っているはずだ・・・」
そしてまっすぐ、

ふいに殺気を感じて跳ね飛ばされた。
転がりながらも正確に照準を合わせた。

絶叫とともにアーリマンは粉々になった。

どこまで成長するのだろう、この銃は。
それより、この空間はいまだにモンスターが健在だ。やはり資料の記述は間違いなかったのだ。リミット寸前までダメージを受けながらもヴィンセントは、胸の高鳴りを押さえきれない。

 

マスタートンベリに遭遇して、久々に変身してしまった。
体が勝手に動いて自分の意思が狭い籠に閉じ込められるような嫌な気分だ。原型を留めないまで打ちのめした相手は、深緑の液体になって地面を汚した。
【カオス】に変身した自分がしたことを五秒後に見せられるのは、これで最後にしてもらいたい。
何度体験しても、吐き気に襲われる。早々に立ち去ることを許せ、私はお前たちを殺すために来たのではないのだ。
しかし、ラストエリクサーは有難く戴いてゆく。これもまた、私に必要なものなのだ。

岩を飛びながら先を急ぐ。

大空洞最下部にまばゆく光るクリスタルがあった。あのときのセーブ・クリスタルだ。今も緩やかに回っている。手をかざすと熱いエネルギーが体を包んだ。
「これだ・・・」
ヴィンセントは、しばし休憩を取った。
この先は一気に駆け抜けるのだ。

腰を下ろしたヴィンセントは、手帳を取り出してメモに目を通した。
「どうか、間に合ってくれ。」
 

 

 

 

 

 


 

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ロケット村に届いた一枚のMOには【ジェノバ計画】の全貌と【マテリア】についての研究報告、各地の【魔晄炉】についてのデータがびっしりと記されていた。
ヴィンセントが本当なら忘れてしまいたいこの資料に手を出したのは、
これらが、ガスト博士自身による編集であったからだ。
自分が眠りに陥った後、何があったのか知りたかった。これがもし、宝条の手によるものなら沈黙を続けたかもしれない。ガスト博士の真意を、ヴィンセントは知りたいと思った。

フォルダの中に、見なれないタイトルのファイルがあった。

【生後8週目からの記録】とある。

紛れもなくあの人の産んだ子どものことだ。――母親から引き離された後、プロジェクトチームによって育てられた、ソルジャー・セフィロスの記録――震える手でキーボードを操り、画面を凝視する日が続いた。
たった8週間で取り上げられて、母親は人知れず湖の祠に幽閉されたのだ。

「たった・・・」

ヴィンセントは知らなかった。

最も興味深いことは、母親の手から離されたセフィロスは泣かなくなった、という記述だ。表情は極端に乏しかったが、育児経験のない若いスタッフにとっては『取り扱いやすい子』であったとある。
ガスト博士の所見によると、精神の発達に問題がある、好ましくない事態である、となっている。身体的には標準値から大きく外れることなく、順調な成長が記録されていた。

「最も気になるのは・・・」
クラウドが最後に対峙したという、『内なるセフィロス』のことだ。
超究武神覇斬で打ちのめした内なるセフィロスは、光の束を吹き出して消滅したと、クラウドは話した。そして自身はライフストリームに包まれて様々のメッセージが直に脳へと流れこんできたと。子どもの、それもうんと小さい赤ん坊の泣き声がずっとしていた・・・それがキーワードだった。

身体的には成長したが、頑な、孤独な英雄セフィロスは世界のすべてを拒否している――ガスト博士による記述は4年で途切れていた。

公式資料によると、最前線でのセフィロスの活躍は華々しい。しかしそれはうわべだけもものではないか。ヴィンセントは資料を読破した後、独自の調査を開始した。

最もよく訪れたのはコスモキャニオンだった。博士が古代種の生き残り、イファルナと逃亡して先ず身を隠したのは星降る谷、コスモキャニオンだったからだ。

2000年前の地層から掘り出されたそれは、古代種などではなく、厄災だった。ガスト博士はイファルナを見つけ出して悟った、自分は大変な過ちを犯してしまったことに。

宝条たちはギ族を使ってイファルナを取り戻そうとした。

谷の戦士、セトはガスト博士とイファルナを無事に逃れさせた後、洞窟に押し寄せるギ族を一人で食いとめた。毒の矢を一身に浴び、セトは石化してしまった。それでも谷を守って侵入者を監視し続けている。愛する息子との間にわだかまりだけを残して。

「フェニックス・・・ですね。」
長老達との話のなかで、ヴィンセントは確信を得て身震いをした。
「じゃが、お前さんの身を滅ぼすかもしれないぞ」
「ふ、私にとってもはや失うものなど何一つない。」

 

 

 

 

 

 

 

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相変わらず、星の胎内にはモンスターが健在だった。しかしヴィンセントは恐ろしいとも、苦しいとも、疲れたとも、少しも感じなかった。デス・ペナルティはますます破壊力を増し、ほぼ一撃で相手を粉砕してしまう。
「どけ、」
念じるだけで道が開ける。
私は今、一筋の光の道をまっすぐに進む。

ジェノバ・SYNTHESIS、やはり復活していた。これを完全に消滅させねば、私の目的は達成できない。

心が乱れた。

あのひとが受け入れた人体実験は、結論から言えば間違っていた。
だがしかし、生命は誕生した。
生まれるべくして生まれてきた命・・・

お前はあの実験でどんな役割をしたのか?

答えろ。

よこしまな思念波がヴィンセントを締めつけた。

違う、
もはや違う。
ひとは悔い改める心があれば
許されるのだ。
罪はついて回るが
許されるのだ。
あのひととて例外ではない。
尊い【命】を産み出したあのひとに
罪はない。
罪は
あのひとを止めることができなかった
この私にこそあるのだ。

私は今から罪を償う。
お前は私と共に闇に帰るのだ。
あのひとを解き放て。
あのひとの愛する息子を返せ。

6発の銃弾が、ジェノバSYNTHESISに打ちこまれた。
しかしまだ蠢く体に、怪しく輝く赤いマテリアを突きつけた。

フェニックスの翼が厄災を包んで、空間が閉じた。

音がしない。

耳鳴りがする。

 

 

 

 

張り詰めた空気を破って弱々しい呼び声がした。

 

 

おさなごはゼリー状の液体に包まれていた。

「本当に・・・」

そっと手を差し入れると、思ったよりも簡単に助け出すことができた。

とろり…

滴り落ちる液体は、あの日の、あのひとの潤んだ瞳のようで。
膝が震えた。
まだ、私は泣けない。

ヴィンセントは疲れきった体にエリクサーを使うと、さらにフェニックスを握り締めた。からだ中からみなぎったエネルギーが、おさなごを包んだ。すると、閉じられていた瞼が幽かに震えて、あのひとと同じ色の瞳が夢から覚めただけのように開いた。

そして、びっくりするような声で泣き出した。薄い膜のかかったような濡れた瞳は、何かを捜し求めて世界を見渡した。

危なっかしい手つきで子どもを抱いたヴィンセントは、力を振り絞って歩き出した。

あたたかい

行こう
美しい母のもとへ
あなたの帰るべき腕の中に。
私が
命に代えても
あのひとのもとに

あなたは
あなたの意思で
命を掴み取ったのだ。
生きたいと願ったのだ。

生きるのだ。

 

 

Fine