潮風のプレリュード

 

 

1

出た!
バルロン2匹と!
探してたやつだ。

目で合図を送るとウエストポーチから野菜を取り出した。

OK、いいよ。
やった?
うん!

野菜をついばんで大人しいチョコボにひょいと鞍を置いた。
あぶみに足をかけた途端、不意に羽をひろげて暴れだした。はずみでユフィは地面に叩きつけられた。はみを食まされて不快感を顕わにするのをクラウドが腕力でねじ伏せた。

ゆふぃ!早く。
いてて・・
ほら、早く!!
このっ!

鞍を乗せなおしてようやくチョコボは観念したのか、ユフィが背中にあるのをみとめた。

「今日はもう3羽目だ」
「調子いいねぇ」

クラスAとかBのチョコボをつかまえてみるが、都合よく雌雄であるとは限らない。日によってはオスばっかりで、苦労が水の泡なんてことは別に珍しいことではない。
「捕まえる前にオスとかメスとかわかる方法あったらラクチンなのにね」
派手にしりもちをついたおしりをさすさすしながら、ユフィは笑った。
「よかったな、今日はついてるんだよ。」
オス2、メス1、願ったりだとクラウドも笑う。

ロケット村近くに出現するチョコボは専らクラスBで、わりと御しやすい子が多いようだ。これからレースに出場して、鍛え上げたらカップリングする。
「今日はこのぐらいにしよう」
つんつん頭はチョコボと同じだ、金髪と飾り羽根が夕陽に照らされてきらきらする。

きれいだな・・・

ユフィはこの風景がとても好きだった。
ダチャオさまの指先から見た景色もいいけど、なんか、こう、不思議な気分・・・
やがて夕凪。
潮の香りが弱くなる。
「おい、帰るぞ。ユフィ?」
ぼけっとしてるとまた振り落とされるぞ、怪訝な顔でクラウドが言う。
「あ、あはは、夕焼けがね!きれいでさ」
言い終わらないうちに手綱をぴしりと利かせてユフィは走り出した。

星を救う戦いが済んで程なく、ティファはコレル行きの船に乗ってしまった。セブンスヘヴンの女主人となり、結婚してしまった。

ロケット村に置き去りにされたクラウドはユフィのチョコボハンティングにつきあっていた。ふたりはずるずるとチョコボを追う生活を送っていた。
それからさらに1年、もうすぐ念願のチョコボファームが完成する。
だからもうあれから2年が過ぎようとしていた。

あれから……

 

 

 

2

息を殺して森に潜む。

「ほんとにここにいるのか?」
「そう書いてあったんだ。信じるしかない」
「んなこといって、いつまでこんなことしてるんだよ?」
「しかたがないだろ。あれがないとどうしようも!?」

波音がする。草いきれに混じる潮の香りに気が散る。

「けどさぁ・・・」
「しっ!」
「あれ?」
『うん』
行くぞ!

完璧な呼吸だった。
お互いの心が手に取るようにわかる。互いの心象が直に脳に流れこんでくるような気持ちよさだ。
「とった!!!」
流石は忍者、ゴブリンの懐からゼイオの実をすり取った。
白い歯を見せて「にっ」と笑う。
「コラ!油断するな」
右目の際をパンチが掠めた。
引き下がり際にクラウドの剣が容赦なくひらめいた。
ゴブリンは気絶した。
「ほら、早く!」
ユフィの腕をひっつかんでその場を立ち去った。

 

 

ゴブリンアイランドの滞在予定は2泊。
ゼイオの実を集めるために、ユフィとクラウドはシドに頼んでここにおろしてもらった。チョコボの繁殖にゼイオの実は欠かせないから。

「んじゃ、明後日だな。時間は今日と同じだぞ」
相変わらず乗物酔いの2人は、ようやく地面にたどりついたところで冷や汗をぬぐっていた。

どうしようもなさそうなので、シドは荷下ろしを手伝ってやった。
この島は水があるので、食糧少々とテント類だけで済んだ。クルーたちはシドに耳打ちをした。
「艇長、私は1個に50ギルです」
「ほう?」
「ボクは0に100ギルにします」
「なんとまぁ」
シドはこんなつまらない賭博の親なんかやめようかな、と、哀しい目でヨレヨレの2人を眺めた。

「おい、じゃあ行くからな」
顔に縦線を入れたクラウドが、座り込んだままで手を振ってよこした。上空を旋回してブリッジから見ると、先に立ちあがったユフィが、クラウドの腕を引っ張っていた。
『こりゃ、親のひとり勝ちのメが出てきたぜ』
帰ってシエラに話してやろう、シドは笑いをかみ殺して船を発進させた。

 

 

 

「ほら!3個目だよ」
頬骨の真上だったので傷はたいしたことはなかったが、打ち身になって青く腫れている。ちょこっとテープを張っただけでユフィは、むふふ・・・とほくそえんだ。
ゼイオの実を日の光にかざしてみた。
「知ってるか?オレたちが何個、実をゲットするか、賭けている人たちがいるんだぞ」
「???なにそれ?」
クラウドのウエストバックに実をしまうと、ユフィはしゅしゅしゅ!と、型を決めて飛び跳ねた。

ぐ〜〜〜

「おなかすいたよ・・・」
「そうだな、今日はもうこれぐらいにしよう」


「野宿なんて、久しぶりだね。なつかしい・・・」

あれから2年・・・まだ2年。

どういういきさつか、本当にわからないんだ。
なんでユフィの相棒…この言いかたもしっくりこないけど…してるのか、わからないんだ。何が嬉しくて、朝の4時だ5時だに起きぬけてチョコボの世話をするんだろう、俺。
その、たしかにユフィと2人でつるんでる、そう、つるんでるんだ。
悪いか?
まだ、き、キスしたことも、したいと思ったことも・・・ないし。
観覧車の中で?
なんで知ってるんだ?
と!とにかく!
男が女と一緒にいると絶対に、その、恋人とかでなくちゃいけないか?
そりゃ、まぁ、それが自然といわれたら言い返せはしない。

女に興味が無いとか、オトコがすき、なんて、変なサイトでは人権蹂躙もなにもあったものじゃない、よくもまぁそれだけハナシを作れるよな、というのもあって、オレもザックスもセフィもヴィンも、大迷惑している。

大きな声では言えないが、残りの2人までも滅茶苦茶にしているのを偶然見かけたんだ。シエラさんや…ティ、ファには口が裂けても言えないよ。
いやすごかった。…もう忘れよう、夢に出てきたらこわいし。
坂口ヒロノブさん、何とかならないか?
野村さん、詳細設定を気前よく公開しろよ。
別に同性愛を偏見しているんじゃない。
オリキャラである俺たちを使って、微細に性愛を描写するのは卑怯だと・・・何のハナシだ?誰に言ってるんだ?

だから、その、ユフィだ。
確かに今は、ロケット村で一緒にいる。
家賃がかさむから、でも、部屋は別だ!
食事は当番制だ!
もっとも、アイツが当番だとどういうわけか上海亭とか、シエラさんのところとかで夕食になる。
2人で歩くときもあった。
村の人から声がかかることも・・・あった。でも、どう考えても俺もユフィも、そういう具合とは違うんだ。
本当だ。
その、・・・エアリスに感じていた気持ちは、甘くて、すっぱくて、切なくて、無くしたくない…無くしてしまったけど。ユフィと並んで歩いていて、そんなことを感じたことは全然ない。きっとユフィだってそう言うのに決まってる。

今でもふと、エアリスが笑ったような気がして、優しさに包まれるようなときがあるんだ。もう会えないって、哀しくなるとエアリスが笑うんだ、「いつもそばにいるじゃない!」
そう、目を閉じれば花のような笑顔が胸をいっぱいにしてくれる。そうなんだ、エアリスは星に戻ったんだ。そして俺は彼女を守りきれなかった、それは紛れもない事実。

それから、俺を大切にしてくれた……あれは憧れだったんだろうな、ティファが子供を産んだってここに来る前にシドから聞いた。
予定よりうんと早かったとか、よくわからないけれど。
なんでも、双子だったって。
どういうわけか、すごいショックだった。ショックなんか、彼女が結婚、いや、ヤツのところに行ってしまったときにそれこそ、もう二度と立てないほど打ちのめされたんだから。
エアリスから零れ落ちて星に帰ってしまった命が、ティファの体から溢れだした。自分の体のなかで命を育んで、この世に送り出す・・・何で女の人ってそんなことができるのだろう?やっぱりショックだ。
村を出るとき、ああ、もうずっとずうと昔、ティファに「ピンチのときには・・・」って、約束させられた。いろいろがんばってみたけれど、
結局本当のピンチのときにティファを助けたのは、俺ではなかった。
それでいろいろいやな思いをさせたりもしたけれど、今にしてみればうーーん、これでよかったのかなとも思う。悔しいけれど、ティファ、今すごく幸せだし、ヤツも同じ気持ちだろうから。
俺はヤツのように丸ごとのティファを受けとめることは、できなかった。
無理、だよな。
もしかしたら、俺は誰かに「受けとめて欲しい」のかもしれない。ユフィに「受けとめてもらおう」とは、いくら俺でも考えていない。
だから、つるんで、いるんだ。そうだよ、きっと。

うまく話題をそらせたと思ったのに、ユフィのやつめ、俺の顔を見て
にっ!笑うなよな。

ちょっとおかしいんだ。
いたづらっぽく笑うだろ、そうしたらユフィの目、ぴかっ、って音を立てて
光るんだ。そうしたら自分の気持ちに関係無く、その、瞳に触りたくなるんだ。
触りはしない、だって、おっそろしくてとてもそんな!疾風迅雷・・・このところ、一段ときれが良くなった。あんなのが繰り出されるのわかってるのに怒らせるようなマネなんかできない。

なんだかわからないというのはそのあたりなんだ。こんな感じ、今まで味わったこともないし。もちろんエアリスや、ティファに感じたことは、ない。やっていることは大して変らないけれど、この前なんか
「きれいだな」
呟いてびっくりしたのなんの!!

ユフィだぞ。
俺は俺に「大丈夫かよ、おい」と、よく笑ってやる。
これは一体何なんだろう?
誰に尋ねるわけにもゆかないから、本当、困っているんだ。仮にもし、それが「すき」っていう気持ちだとしたら?

もう二度と人をすきになんてなれない。
『星を救う』なんて大見栄切っても、エアリスを守れず、ティファを許せなかった。最後まで俺を信じてくれると思っていたのに、ティファ・・・俺の体を、ジェノバとずっと付き合っていく俺を、怖がった。
・・・なんて、まだ嘘をついている。
ティファが怖がったのはジェノバなんかじゃあない。体の中じゃなくて、心の中にあるものだった。これじゃあ、嫌われるのも当たり前だ。

ごめんよ、ティファ。
もうちょっと大人になれたら、きっと君の子供たちを見に行く。そして、お祝いを言いうから。

 

「・・・聞いてんのかよ?」
こつん、たきぎの切れっぱしが腕輪に当った。

この変な仲間は、俺の中にズカズカ入ってくるし、人の都合などお構いなしで、自分の野望に俺をまき込んでいった。それで今こうして、野宿だ。

クラウドはニの腕をペシリと叩いた。
ちぇっ、蚊にさされてしまった。

俺をチョコボに乗っけて、レースに追いやるんだ。
結局、食事係は俺ばっかになった。
でもまぁいい。
もりもり食べて「美味しいよ」を連発するから許してやる。
そのうえ、
その・・・

ユフィ、俺のことが好きなんだろうか?

普通、人を好きになったら、
その、
優しい声で囁くように話しかけたり
何くれとなく世話をやいてみたり
甘いお菓子を作ったり、
ほら、
女っぽくなって・・・・

まぁ、
ユフィだからな。

けど、
俺の
ファーストキス・・・
「そういう雰囲気かなと思ったワケよ」
雰囲気で・・・盗られてしまった。
「何とか言ってよ!」って言うから
「・・・・・・・・・・・・・ナントカ」
って誤魔化したら、照れながら一発叩かれた。
あれからだった。
ずっと、変。

 

 

 

3

焚き火のせいだ。

俺はふと立ちあがった。
そしてユフィに口づけをした。
ユフィは拒まなかった。
さすがに身を硬くしていたが。

俺はユフィが欲しくなった。
ユフィに触りたくなった。
ユフィのすべてが欲しくなった。
唇ですべて感じてみたくなった。
この手でユフィを確かめたくなった。

胸のふくらみに触れたら、ユフィの右手が押し戻そうとした。思わず見つめあったお互いの瞳が、キラキラしていた。唇が震えていたので俺はまた口づけをした。

背中に触れた。黒髪を撫でた。うなじに指を滑らせた。ぴかっ、と光る不思議な瞳に触ってみたかったけど、壊しそうだったから睫をそおっと指先でたどってみた。
また、唇を重ねてみた。
シャツの裾から滑り入れた手が俺の気持ちに関係なく…違うかもしれない、こっちの方が正直なんだ、きっと。

着ているものがすごく邪魔で、とても不自然に思えた。

ふいにかぶりを振ってユフィが俺の唇から逃れた。
目が赤かった。
「・・・怒った?」
俯いたまま頷いた。
俺はユフィを自由にした。
「・・・ごめん」
今度は首を横にふった。
「・・・ティファの・・・かわり?エアリスの・・・?」
体中が凍りついた。
「アタイ・・・そんなんじゃ、・・・やだから」
ユフィはテントに飛び込むと、中から寝袋を放り出した。

返す言葉が見つからなかった。

俺は、ユフィと、・・・どうなりたい?

 

 

 

 

4

シドが迎えに来るまでまだ半日ほどある。
もうひと頑張りして【実】を集めようと思うのだが、結局あれから眠れなくて、全然だめだ。
ユフィは俺に何かいいたそうな顔をしているが、つとめて普通を装っている。でも動きがぎこちないし、コンビネーションというものがなってなかった。だからちっとも盗めない。

「なんで?気絶させるんだよ!まだ盗ってないじゃん」
「んなこといってたら、逃げ出すじゃないか!」

お互いにだめなことはわかっていたが、こうなったら意地だ。
「ほら!出たよ!」
「よそ見するな!バカ!」
これじゃあ・・・
「バカとはなんだよ!あんたみたいなスケベ野郎に言われたかないよ!」
「俺のどこが!?」
「スケベだからスケベって言ったんだよ!スケベ!」
ぶちっと頭の線が切れる音がした。。
「なんだと!お前こそ、俺のファーストキス盗ったくせに!!」
「う、うるさい!そんなことで誤魔化すな!」
ばしっ!スーパーボールを投げつけられた。
「そんなこととはなんだよ!胸も出っ張ってないくせに!!」
剣を投げるわけにはいかなかったから、ポケットにあったチヂマールを投げた。軽くかわされたことは言うまでもない。

言い争っているうちにゴブリンは逃げ出してしまった。2人はアイテムの投げ合いに疲れてその場に座りこんでしまった。

 

「お前ら〜〜何やってんだ〜?」

あたりに散らばるアイテムを拾いながら、シドとシエラがやって来た。
ゼイオの実を丁寧に集めたシエラが声をかけた。
「ほら、大切な実じゃない。転んじゃったの?」
ケンカしたことぐらいすぐにわかった。

 

 

 

 

5

オーバーホール明けの調整を兼ねたフライトなので、パイロットはシド、メカニックにはシエラ。大きな飛空艇・ハイウィンドが2人だけで飛ぶことも、考えてみれば大したものだ。
2人はあれこれチェックをしながら、ピッタリの呼吸で船を操っていた。
モニター越しの2人のやり取りは全く無駄がなく、ユフィの目からもシドの横顔はかっこ良かった。

クラウドなんかとは全然違うんだから。

一通りの作業が終了してシエラが操縦室に戻ってきた。
「どうですか、艇長?」
「おっ、いい感じだ。けど、ちっと気になるんだ、」
「例のところですか」

「おい、クラウド。」
不意に声をかけられて気持ちの悪いクラウドは、視線だけをシドに向けた。
「一緒に来い!手伝え」
操縦桿を握ったのはもちろんシエラだ。
「お願いね、クラウドさん」
シエラがにこやかに送り出した。

 

 

 

「シエラさん、なんか、楽しそうだね。」
フライトスーツ、これを着ると別人に見える。
「ええ、ハイウィンドは久しぶりだから、」
横顔がうきうきしている。ゆったりとして、堂々として、頼もしい。
シドが信頼するわけだ。
「ねえ、シエラさんさぁ、どうしてシドのお嫁さんになったの?」
唐突な問いかけに、シエラはちらとユフィをみた。そしてちょっと俯いて口元だけでくすっと笑った。
「クラウドさんと、ケンカしたの?」
今度はユフィが驚いて、そして耳の付け根まで赤くなった。
「シ、シエラさん・・・」
もじもじと困ったユフィがとてもかわいかった。

 

「艇長はね、かっこいいでしょ。素敵なのよ。優しいし。・・・私なんかでいいのかしらっていつも思ってるのよ。」
見たことのない顔だった。頬を上気させ、少女のように瞳をキラキラさせて・・・何よりこんなに雄弁だなんて、ユフィの知っているシエラではないかのようだった。
「でね、艇長に頼まれたのよ。ハイウィンドの整備は『おめぇ、やれ』って」
ものまねがけっこう似ていた。
シエラも自分の言っていることがおかしかった。口を突いて出るシドへの素直な思いがここちよかった。

いつもなら「バッカじゃないの〜」とでも言いそうなユフィだが、気分も悪いし、クラウドのことで悩んでいるようだし、ユフィらしからぬ暗い顔でいちいちシエラのいうことを聞いていた。

「それって、『愛してる』ってこと?」
ストレートな言葉使いがユフィらしい、シドにも聞いてもらおう!
「そういうことかしらね。」
つられたようにシエラも気持ち良く肯定した。
「やっぱり、その、すきなひととはさぁ、」
思いつめた表情がおおよそのことを語っていた。シエラは懐かしいものに出会ったような感慨を覚えた。乙女から大人への階段を、この子も登ろうとしているのだろう。

【ブリッジ!速度を落としてくれ。】
「はい、艇長」
てきぱきと対応するシエラをユフィは見とれていた。
【高度をさげろ、ゆっくりだ】
「了解!」
まるで2人が手を取り合っているような気がした。ユフィはとても羨ましかった。

 

 

 

 

「ユフィさんはクラウドさんとどうなりたい?自分の気持ちを正直に話してみたら?」
なぜか泪がいっぱいたまってきた。
「嫌われたくないからって、自分の望まないことをするのはどうかしら?」
「けど!」
「それでクラウドさんがあなたをキライになるなら、そこまでのことよ」
薔薇色の頬を泪がつたう。
「本当にすきなら、愛しているなら、相手の気持ちを尊重できるはずよ」
自分に言い聞かせるようにシエラは言った。
「ベッドをともにすることだけが愛している証拠だなんて、さびしい話しだと私は思うわ」
乙女には刺激的なアドバイスだったかな、シエラはユフィの次を待った。

「そ・・・そっか。アタシ、考えすぎてたかもしんない。」
黒髪に隠れた瞳はきっと、まだ濡れているだろう。
「クラウドはさぁ、ヤネよヤネ。シエラさんわかる?」
えいっ、と、背中を伸ばしたらしゅしゅしゅしゅ、得意の型を決めて見せた。
「ヤネさんのお戻りよ」

「ヤネ!・・・あれ?」
怪訝な顔のシドが1人で戻ってきた。
「ヤネがどうかしたか?」
「クラウドは?」
拍子抜けしたユフィの頭をシドはくしゃくしゃくしゃと、かきまわした。
「デッキでのびてるぜ」
聞いた途端にバタバタと、走り出すユフィは笑顔だった。

 

「おめぇよ、私語はモニターをオフにしてからにしろよな」
肩をすぼめていたずらっぽく笑うシエラを見ることはできないまま、シドは呆れ顔で言った。
「ふふふ、ユフィさんにはナイショですよ」
「クラウドのやつめ、気絶しそうだったぞ。役にたたねぇ奴だ」

タバコに火をつけようとして、
「おっ、すまねぇ。酸欠になっちまうな」
嬉しそうにシドは、ライターをポケットにしまいこんだ。

おわり