旅の途中

Over

ごめん、私、待てなかった
あなたが悪いのよ
なにも言わずに飛び出して
時々思わせぶりなデンワしてきて・・・
発信音がいつまでもいつまでも
耳の奥に残って、眠れなくなるの、わかる?

なにも言わないのは罪よ
私に答えを出させた
ずるいひと

どうしてこんな人を好きになったのかしら?

その蒼い瞳に見つめられると、どんなにつっぱてもダメ
首の付け根のところが痛くなって何も考えられなくなる
それでずるずると、思いを引きずっていたんだわ

けれど、私だって女よ
思われているのかどうか、わからないまま放り出されて
不安な気持ちにさせておいて
宙ぶらりんにされたままなんて
何のよりどころもないまま、そういつまでも気持ちを途切れないように     
できるわけ・・・ない

そんなときに誰かに優しくされたら、泣いちゃうんだから

どうして私に「大嫌いだ」って、言ってくれなかったの?
ホントは嫌いなくせに
何も言わないのは、嫌われるよりずっとずっと・・・辛いんだから

もう、いい
もう・・・
恨み言なんて
あなただって言いたいこと、山ほどあるわよね
あなたを嫌いになることは、これからもずっと、できない・・・

でもあの方は「私が忘れさせてあげよう」って笑ったわ
一生、あなたを忘れることなどできない、そう言ったら
「時間が解決してくれますよ」と、穏やかに囁いたの

気持ちがとても静まったの

だから
シド
お別れです

あなたは、夢の空を、高くたかく飛んでください
勝手な言い方ですが
死なないでくださいね
さようなら
とても愛していました
ありがとう
さようなら

 

 

 

 

 

こ、こら!!!
一方的に言うだけ言って、
なにが『さようなら』だ!!
言いたいことなら、オレ様にだって山ほどあるぞ。
待てよ、
お、おい、
その男は誰だ!?
やい、コノヤロウ!!
卑怯だぞ、顔を見せやがれ、
聞こえねぇのか??
待つんだ、
待ってくれ、
シエラ!!!
シエラ!!!
オレ様の話も聞け!!!

 

 

 

 

 

 


「うわぁぁぁぁぁぁあああ・・・・」

 

 

 

 

 

 

がばっと起き上がると、ユフィのどんぐり目玉があった。
その隣、茶色の瞳は、ティファ・・だ。どういうわけか顔が真っ赤っかだ。
きゅっと結んだ口元が小刻みに震え始めた。
「・・・」
慌てて両手で口をふさぐと、部屋を出て行ってしまった。

「打ち所が悪かったんだな」
バレットはシドの左目の上に貼りつけてあったシップをべりっとひっぺがえして、新しくひんやりとしたのに張り替えた。
見かけによらず手つきがいい。
奴も目が笑っている。吹き出しそうなのを必死でこらえているのがわかる。

だんだん、不安になってきた。

「ねぇ、シド。その・・・」
勝手に出してきてごめんね、ティファが頬を染めてシドに着替えを差し出した。
なんで一同揃ってオレ様の回りにいるのか?

全然わからない。

汗びっしょりのシドは、のどがからからで、目から水分が出ていることに気がついた。

ぱたぱた…燃えるしっぽが、笑っていた。あの野郎、何が可笑しいんだ?

こんなときだけ、都合よさそうにケモノのフリしやがって……
知ってるんだぞ、ナナキはエアリスに惚れてたんだ。

「オジさん、お茶だよ」
手が震えている、この辺から探ってみるか。
「ユフィ、心配かけたみてぇだな」
顔がひきつった。
「え、し、心配って!?」
やっぱり何か隠してやがる。

皆、しまった!という顔でユフィを見た。
ひとりだけ、顔色一つ変えず、は、いつもだが、ヴィンがユフィをさらうかのように鮮やかにマントに納めると、歩幅も変えずに部屋を後にした。

何故どいつもこいつも胸をなでおろすのか、シドはわからなかった。それより、オレ様はどうしてベッドにいるのか?打ち所が悪いたぁ、何事だ?

「ちょっと、やめろよ!おろせ!こらっ」
マントの下でもがくユフィに、2発ほどパンチをくらいながらヴィンはなおも歩いていく。ロビーまで来てようやくユフィを解放した。

「あまり殴ると変身してしまう、よさないか」

ソファに下ろされたユフィは、ほっぺたをふくらかしてヴィンにくってかかった。
「せっかくいいとこだったのに!!早く部屋に戻ろうよ、もう!!」
「お前はここでいるのがいい」
「やだやだ!!」
「仕方ない、では私と一緒に大人しくできるか」
「わかったよ!ぶーぶーーー」

 

 

 

「でもさぁ、やっぱりシドってさぁ、好きなんだ・・・」
「……………………」
「最初聞いたときは何いってんのか、わかんなかったけど」
「……………………」
「びっくりしたよ、『オレが悪かった〜』なんてさぁ」
「……………………」
「ティファがさぁ、『しっかり、シド』なんて声かけたらさぁ」
「……………………」
「『シエラーー』とかいっちゃってさぁ、ティファのことを、ぎゅ〜〜」
「やはり、ロビーで待機だな・・・」
ぴたりと足を止めたヴィンがちょっとこわい顔で振りかえった。急に止まるからユフィはどん、と、ぶち当たった。
「んたっ、」
転びそうになったユフィを、またもや顔色一つ変えずに抱きとめた。すっきりと腕の中に収まるさまは、まるで恋人どうしの抱擁になってしまった。
「よくそれで忍者がつとまるな、」
声をかけられなければ、どうしてよいかわからなかった。するりと抜け出して、しゅしゅしゅ!!!と、無意味に型を決めてみた。
なんだか切れが悪い…
でもヴィンは何事もなかったかのように行ってしまった。
「まてよ、もう!」

 

「落羽〜〜?」
大声を出したらこめかみがじーーんとした。
左半身が痛いと思えば、そうだったのか。
「最終コーナーで、ジョーと競り合ったんだ」
クラウドがいぶかしげな顔でシドを見た。

文句あるって顔で言うじゃねぇか

「お、思い出したぞ、あの野郎!オレ様の進路妨害しやがったんだ」

下りながら右に切れ込んでいく最終コーナ。黒衣のジョーがシドの前にいた。見事に加速していくシドのチョコボが追い上げていくが、ジョーは譲らなかった。無理に進路をこじ開けようと突っ込んだところで、ジョーのチョコボ、トウホウフハイが斜行してきた。進路を塞がれて弾き飛ばされたシドは、ターフにめり込んだ。

いたた・・・
もうちょっと小声で喋ろう。

「ジョーは一番でゴールしたけど、審議で降着になったよ」

くそ、一着はこのオレ様のはずだったのに、

「そうか、ざまぁみやがれだ!このオレ様に張り合おうなんて100年早いってんだ!」

多少は気が紛れた。
これであの野郎が一着だなんてことになれば、メテオどころじゃねぇってもんだ。空だろうと、海だろうと、ターフだろうと、オレ様の前を行こうなんて奴は許さねぇ!!

 

「おお、威勢のいいジョッキーくん、気がついたかな?」
パンいちのオヤジがずかずかと入ってきてシドに握手を求めた。
「早速リベンジ、どうかね、奥さんも喜ぶぞ」
一同、顔面蒼白になって園長、ディオを見た。
「『シエラ〜〜』さんだろ、」
途端にバレットがディオに猛タックルをかけると、口を塞いでドアのほうへと引きずって行った。ティファもクラウドも、ナナキも加勢して大騒ぎになった。

「シエラぁ?、奥さん????」

意表を突かれてシドは目が点になった。

どさくさ紛れに逃げようとしたケット・シーのしっぽを捕まえて引き倒した。
「な、なにしますねん!!危ないやないですか!」
慌ててデブ・モーグリに這い上がろうとするのを押さえつけてすごんでみせた。
「やい、正体ばらすぞ、このオレ様が知らねぇとでも思ってるのか?」
ケット・シーが身を硬くした。
「な、何のことですか!?」
にやりと笑うと耳元に囁いた。
「久しぶりだな、・・・リーブ」
一言もなかった。
「こらっ、フリーズしてんじゃねぇ!」
ぼかっと殴ると、ケット・シーは観念したのか返事をした。
「ご、ご無沙汰してます…」

 

デブ・モーグリに取りつくと、ケット・シーこと、リーブは小さくなってシドに挨拶をした。
「ばれてましたか…、そやないかと思うてましたけど…」
腕組をして睨みつけるシドは、リーブのことよりももっと気になることを問いただした。
「お前ら、オレ様に隠し事して、楽しそうだな」

 

一部始終を聞き出して、シドは激しく落ちこんだ。

あいつら、ひとが苦しんでるのを、笑いやがったな。
うなされてたのか…オレ様としたことが…

それをオレに黙って、弱みを握ったつもりだな。

ん、待てよ。
あいつら、まさか!
「リーブ、ケータイはどこだ、」
気迫に押されてもう余計なツッコミは入れなくなった、いいことだ。デイバックの中に、つい先日買ったケータイが入れてあった。
ぷちぷち・・・
「おい、リーブ、気がきかねぇな」
ケット・シーはようやく解放されたと、足取り軽く部屋を出た。でもこの後、バレットに怒鳴られるかと思うと、気が重かった。

早く出ろ、相変わらずノロマやってんじゃねぇ・・・

 

「おう、オレだ。……別に何でもねぇ……う、うるせぇ、用がなけりゃデンワしちゃいけねぇのか?……変わりはないか?……そうか、どこからも連絡はないか?」
『ないといえばなかったけど、』
「あったんならさっさと言えよ!」
『シエラさんおめでとう、とか・・・あやまってたよ、とか・・・何かあったんですか?』
「誰だ!そいつぁ?」
『誰って、』
「早く言え!言うんだ!」
『皆さんが、代わる代わるだったから・・・』
「………………」
『もしもし?艇長?落羽って何のことで、』ぶちっ

もうだめだ・・・星を救うどころじゃねぇ・・・

はぁ〜〜っ、
もう、
ゲームオーバーにしてくれ・・・
メテオ、
いますぐ落ちて来い、
ここだ、
ここにだ。

     

【解説として】

◎ 落羽  らくば
レース中にジョッキーがチョコボから落ちること
入線しても失格となる

◎ 羽券  ばけん
勝ちチョコボ投票券 羽番連勝複式 (連勝単式やワイドの導入の予定はない)未成年および学生は購入できない。

◎ 斜行  しゃこう
レース中にチョコボが左右に歪んで走行すること。後続のチョコボが正常に走行することを妨げることがあり危険。チョコボの性質上ある程度はやむをえない場合がほとんどだが、ジョッキーによる不正がないか審議の対象となる場合がある。不正が認められると着順を繰り下げられたり、 悪質なものは失格および騎乗停止などの処分になる