コレルへ  2

 

 

操縦室にはクルー達が楽しそうにスタンバイしていた。シドが入ると元気よく挨拶が飛び交った。
「艇長!おはようございます」
「おっ、調子はどうでぃ」
「感動的に完璧です」
「よし!行くぞ。発進だ」

タバコに火をつけて、見下ろすとシエラと目があった。よかった、おおむね復調だな。ちょっくら行ってくる。
もどる頃にはもっと元気になってるだろう。軽く右手を上げるとシエラも応えた。

 

 

「おいシド!お前知ってたのか?」
どすどすと操縦室に走りこんでくるのはバレットだ。
「騒々しいな、オレ様は発進で忙しいんだ」
「ティファが乗ってるんだ、1人で」
「それがどうかしたのか?」

今度は息せききって、ティファが入ってきた。
「やめてよ、バレット。」
クルリと振り返るとバレットは困った顔でティファに言う
「ティファ、お前滅茶苦茶じゃないか!なんで1人なんだよ?クラウドに黙ってきたなんてよ」

シドは前方を睨んだまま、2人の話を聞いていない。
本当に発進で忙しいのだ。

ティファは操縦室の前方から村を見た。
「しばらくひとりがいいなって、だから…」
「だからって、お前、荷物を全部まとめてるじゃねえか」
今度はティファがクルリと振り返った。
「…………」
つかつかと操縦室を出ようとする。

「おい、待てよ」
無視して足を止めないティファの腕を捕まえた
「は、はなして」
「クラウドから逃げるってえのか」
「そっ、そんなこと!」

ちらと、2人のやりとりを見る。
が、すぐに前方を凝視するシド。
このバカオヤジは、人のことにはお節介が過ぎるくせに。自分のことになると……やれやれ、ホントにヨメがいたのか信じられない。

「おい、バレット。それでおまえ、操縦室に何しににきたんだぁ?」
声をかけられて、はっと手を離した。
ティファはその場に気まずそうに立ったままだ。
「お、おう。そうだ、あんたからも村に戻るように言ってくれ。」

馬鹿か、お前はよ。

よくもそんなんで人のヨメに公然とちゅ〜しやがったな。
「村には戻らないわ!」
拳を固く握り締めたティファはかなりコワイ。2人とも腰が引けた。
「ティファ、落ち着け!帰れなんて言わねぇから、パンチはよせ!」

巡航速度に乗せて、シドは操縦桿をクルーに譲った。

「もうこれ以上、クラウドとはいられないよ。彼の胸の中はエアリスでいっぱいだもの。お互いにひとりになるときなのかもしれないわ」

さばさばした物言いだが、歯を食いしばって耐えているティファが痛々しかった。

「だからって、黙って出てきちまうなんて。ティファらしくないぜ」

ティファがにっこり笑った。あまりの美しさにバレットは目をそらすことができなかった。

「わたしね、またお店ができないかなって思うの」

潤んだ大きな茶色の瞳がキラキラ輝いた。元気が出てくると、ティファはいつもこんなふうだった。

「それに、マリンが『一緒にお店やろうよ』って言ってくれたの」

今度は照れをかくすときのポーズだ。

「マリンと約束したのよ、コレルのみんなにおいしい料理を食べさせてあげようねって」

「じゃあ、ティファ。コレルで船を下りるのか」

さすがのシドもあきれてものが言えない。ぶっきらぼうな、馬鹿馬鹿しい質問に、ティファもホッペタを膨らませてバレットを正面から見た。

「バカ!」

右のギミックめがけてティファのストレートパンチが入った。

「とうちゃん!」

走ってくる女の子に、クルーもみんな目を丸くした。
飛空艇にはあまり乗り合わせないお客様だ。女の子はバレットとティファをかわるがわる見た。

「ねぇ、ティファ、どうしてとうちゃんにパンチなの?もうとうちゃんのことキライになったの」

「しっ、マリン。2人のヒミツだって言ったのに」
恥ずかしさのあまり、ティファはその場に座り込んでしまった。シドはおかしさをこらえるのに必死だった。

 バレットの弱みはマリンだ。

優しい父親の顔になってマリンを抱き上げた。
「ねえとうちゃん、なんでだめなの?」
「なんで、っていったって」
「とうちゃんはティファが嫌いなの?」
「……そうじゃないんだ、その…」
「マリンはティファのこと、大好きなのに…」

座り込んでいるティファの肩をポンと叩くと、シドはにっと笑った。
「やいバレット、観念したらどうだ。連れてってやれよ」
「そうだよ、とうちゃん。ティファはとうちゃんと行きたいって言ってたよ」
「おっ、マリン、いいこと言うねぇ。マリンの言う通りだ。こらっバレット!シエラもティファも、両方ってわけにはいかねぇぜ。どっちかにしろぃ、身がもたねぇってもんだ。おおそれから、シエラのことはあきらめろ、あんな女と付き合えるのはオレ様ぐらいしかいねぇんだからよ」

「ひっど〜い、シド!シエラさんに言いつけるわよ!」
気をとりなおしたのか、腕を腰に当ててティファが口をへの字に結んで立っていた。

いい顔だ。

「あん、これはもののたとえってやつだ。シエラには言うなよ」

バレットの腕から飛び降りてマリンがティファのもとに走り寄った。
「ねぇティファ、一緒にお店やろうね」
「うん!がんばろうね」

2人は手をつないで操縦室から出ていった。出口で立ち止まってティファが振り返った。
「ごめん、バレット。迷惑かけないようにするから、よろしくね!」

 

 

 

 

 

「……それで、この手紙なのね」
「どうやらアイツは女にゃ手が早いらしいな」
「まあ……」
「おめぇも危ないところだったな、泣くところだったぜ」
「何を言ってるんですか!」
「普通あそこで、ちゅ〜はせんぞ」
「…バカ」
「……ZZZ」
「寝たふりしてもダメですよ……」
「ダメか……」
「ふふ、おやすみなさい」
「おやす…み」


……この前はミーナさんや、ダインさん、エレノアさん、コレルの人達のお墓参りをしてきました。
お店の方も思ったよりもはかどって、私はとても元気です。
あの旅の間、私はずっと見守られていたことにようやく気がつきました。もうすぐ四人家族になれそうです。……シエラ様へ
                 
                 ティファより