発熱

〜ぬくもり〜

 

診療所の廊下を走って、ナースに注意された

 でも走った

シドの家に向かう途中のバレットに追いついた。

「おいバレット、一つ聞きたいことがある!」
振り返ったバレットは怖い顔だった
「こ〜ら、ティファのそばにいてやれと言っただろう」
「そのことだ!」

 拳が震えた

「なんだ、具合でも悪くなったのか?」
「ティファが言ったんだ、『腕の中』にいたと。どうしてだ!?」

慌てるそぶりもなくむしろ静かに答えた。

「何の話をしたか知らないが、ティファはオレの腕の中にいたよ」
「なん、で…」
「泣き疲れて眠っちまったからさ」
「なんで泣くんだ?」
「そりゃ、悲しいことがあったんだろうよ」
投げ捨てるように言われて、クラウドは頭が痛くなった。

「ティファは女だぞ。忘れてないか?たしかにお前たちは大変な経験をしたかもしれねえ。けど、それだからって自分が特別だとかって考えるのはもうやめたらどうだ。ティファの思いに応えられるか?そろそろ本気を見せてやらねぇと…可哀想だぜ」

少年にはまだ無理かもしれない、バレットは迷ったが続けた。

「おまえの中にいるエアリスが。おまえのことを『愛してる』って言ってるぜ。どうするんだ?」

クアウドは唇をかみ締めた

一言も答えられないでいる

「ティファにキチンと話してやれよ。自分の胸のうちを洗いざらいさらけ出してみろ、その勇気があればな」

バレットがいつもよりもさらに大きく思えた

越せない壁のようだ

なんでアンタが立ちはだかるというのだ?アンタにそこまで言われる筋合いがあるのか?

「俺には……わからない、なんでアンタは」

答えを聞かずに、バレットはシドの家のドアをノックしていた。煙草をくゆらせたシドと二言、三言話すと、チラリと二人はクラウドを見た。

そしてドアはしまった。

バレットは上海亭に向かって歩き出した。

 

 

バレットは珍しくその夜、夢を見た。

『なんでそんなにびっくりするの、私のこと忘れたの?』

ミーナだ

『会いたかったぜって、言ってくれなかったね』

  そんなことはない、はずだ。

「もう、会えないと諦めていたから…」

『私はあなたの心の中にいるのよ、あなたが会いたいって思えばいつでも会えるわよ』

 そうだ、おお、そうだぜ!

「すまねぇ、その通りだ」

『でもこうして会えるのは夢の中だけだわ。あなたに触れることはできない…』

 寂しいことを言っている割には、なんだ、目が笑ってるぞ

『私もあなたに手、つないでほしいな、そしたらお熱なんてスグに下がっちゃう』

  口から心臓が飛び出すほど、バレットは焦った

「ち!違うんだ。あの娘はそうじゃないんだって!」

『ははははは!!』ミーナはこれ以上楽しいことはないというほどに笑った。

『ごめんごめん、驚かせちゃって。責めているんじゃないから、ね』

「……ミーナ?」

暖かいものを感じた、重みがあった。腕の中に確かにミーナがいた。存在感がある、夢なのに何だこれは?

「あなた、会いたかった…」

絶句するバレット

「一度、あなたのところにいっておいでって、たくさんの人が背中を押してくれたの。あなたが自分の気持ちに背を向けようとしているからって」

 たくさんの人?ライフストリーム?

「このぬくもり、もう私は与えられない…。でもあなたが私を大切に思っくれるの、痛いほどわかったわ。本当にありがとう、私、幸せよ」

突然に引き裂かれた2人だったから、言い残したことがお互いの胸にたくさんあった。

懐かしいミーナに、バレットも思いのたけを伝えようとした。しかし月並みな言葉以外、出てこない。

「礼を言うのはこっちのほうだ!ミーナ、オレも幸せだぜ」

もどかしくてたまらない、ただ妻の名前を呼ぶだけであとは…熱い息遣い、夢よ今は醒めないでくれ、たとえ一夜でも……頭の中がぱあっと真っ白になったように感じた。

 

 

『あのお嬢さんを……受け止めてあげられるわね』

「ちょっと待て!ミーナ?何のことを言ってるんだ、おまえ変だぞ」 腕の中の存在感がみるみる消えていく

『言い残したこと、どうしても伝えたかったの あなた… もう自分を責めないのよ。 いい、わかった? これからあなたにぬくもりを与えてくれるのはあのお嬢さんよ、私の分まで幸せにしてあげるのよ』

『ふふふふふ……』
「待てよ、待ってくれ」
『あなたとはいつでも会えるから……』

おしまい?

もしよかったら「お別れ」に続いているつもりです…