発熱 

〜温度差〜

 

「バレット、ティファは?」
その声にギロリと一瞥をくれて、人差し指を口の前に立てた。
「しぃーーっ、静かにしろい。眠ってるよ」

ベッドサイドに近寄るクラウドに「おい、こっちだよ」と、壁際の椅子から手招きをした。心配だがどうすることもできず、クラウドはバレットの言う通りに椅子に腰をかけた。

 

「お前どこでなにやってたんだよ」
「うなされてたって、シドが…」
クラウドなりに心配しているのだが、様になっていない
「かわいそうに泣いてたよ、心細くて震えてよ」

このオレが抱いてやっていたんだよ  ふん、夢にも思わねぇだろうよ

「それで具合は?」
「熱が出ただけだ、疲れてたからな。2、3日休めば元気になるさ」

それを聞いたクラウドは、ほっとため息をついた。

「よかった。 俺はティファも死んでしまうんじゃないかって怖くて仕方なかった」
「死んだりしねぇよ。人間そう簡単にはくたばらねぇ」

しかしうつむいたクラウドは暗い声で言い返した。

「でもエアリスは死んでしまった……俺の指と指の間から砂がこぼれるようにいなくなってしまった。エアリスは…」

バレットは眉をひそめた

「エアリスは可哀想だったな、でもよ、今はティファのことをもっと思ってやれよ。お前の心がエアリスでいっぱいなのを承知で、受け入れようとしてるんだぜ」
「オレは……、不器用だし」
「格好つけてる場合か!そんなんだからティファが」

「やめてよ、2人とも……」声が大きすぎたようだ

「ティファ!」
先に歩み寄ったのはクラウドだった。バレットは椅子にかけたままだ。

「ティファ、大丈夫か?ごめん、来るの遅くなってしまった」
無理に笑顔をつくってしまった
顔を半分毛布に隠して答えた
「ありがとう、スグに元気になるから」

微妙な温度差を感じた
作り笑いだなんて自己嫌悪

ティファはクラウドから目をそらせた

上海亭からいなくなってもクラウドは気付かなかったのだろうか。別に探して欲しくて部屋を出たわけではないけれど、しみじみ寂しかったのは本当だった。

シエラさんが夢の中で「見た」という女の人がエアリスに違いないって、わかったときのクラウドの顔、見てられなかったから。

その場にいたたまれなくて、しかたなくその場を離れたのだから

バレットが気を利かせて部屋を出ようとした。
「あの、バレット……」

「悪かったな、起こしちまってよ。……とにかく、今日は大人しくしてるんだぞ」
「ううん、バレット…ありがとう」
小さくうなずくと部屋を出ていった。ティファは何だか心細くなった。

 

 

 

「いいよ、クラウド。随分楽になったから、休んで、ね」
「ああ、でもティファ、どうしてバレットが?」

そんなことを今聞いてどうするというのだろう、ティファはまだ熱のある頭がずきずきして思考能力が停止していた。それでもクラウドがぼんやりしているのにがっかりした。

「気がついたら腕の中だったの」

腕の中とは、さすがのクラウドも聞き捨てがならなかった。

「どういうことだ!?」

答えるのが面倒だ、ものすごく眠くなってきた

「わからないわ、覚えてないもん」

目が勝手に閉じてくる、このまま眠りの海に落ちていくんだ

「覚えていないって、ティファ、答えろよ」

肩を揺すられて、とても不愉快だった。薬のせいでかなり強い眠りに誘われているのだから。そして瞼は自分の意思ではどうすることもできないほど、固く閉ざされてしまった。

「…いや……」

ティファの顔が苦痛でゆがんだ。そこで初めてクラウドは肩をつかんだ手を離した。なんで?ティファが?腕の中なんだ?

口の中が渇いて体が震えた。こうなったら聞くしかない、バレットに本当を。

     

 

 

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