旅の途中

すき?

 

つかの間の休息、脱出ポットを回収したハイウィンドが燃料の補給を受けている間、人間たちは上海亭自慢の料理にありついていた。狭っ苦しいポットの中で、予想通りシドとシエラに見せつけられて、バレットはずっと寝たふりをしていた。おかげで首がコキコキする。

元メカニックだそうだが、ここのマスターは素質があったんだろう。ティファの作るのと同じぐらい美味いメシに、バレットの機嫌もやっとこなおってきた。

「ねぇ、バレット、本当のところはどうなの」
「おっ、ひとりでどうした?クラウドと喧嘩でもしたか?」
「いやぁねぇ、私だってお酒飲みたいとき、あるわよ。マスター、すいません水割りください」
「はいはい、若い娘さんが止まり木にいてくれるなんて、久しぶりです、いいもんですな」

上海亭のマスターは、にこやかにボトルに手を伸ばした。

グラスを手にして、ティファが首を傾けて話した。
「だって、変よ。初めはシドのこと、冷やかしてるだけかと思ってたけど。さっきだって、シドと2人、怖かったもん。……バレット、シエラさんのこと好きなんでしょう!」

大きな茶色の瞳が、好奇心いっぱいにオトナの世界を覗きたがっている、とでもいった風情だ。

ポークビーンズを潰していたフォークを皿に置いたバレットは、腕を組んで頷いた。
「すきだなぁ、シエラさんは素晴らしいひとだぜ。」
ティファの顔に縦線がはいった。
「やっぱり・・・。でもそれって、まずいんじゃないの?」

ティファは可愛いな、マリンの次に可愛いぞ。

「今に『決闘だ』なんてことになるんじゃないかって、クラウドだって 心配してるのよ」
「んーー、ティファはどうだ?シドのこと、好きだろう?」
「シド?ええ、まあ、キライではないわ。仲間だし」
「じゃオレはどうだ?」
「す、すきよ。仲間だもの」

仲間・・・だな。

「クラウドはどうだ?」

ティファ、可愛いよ、パブの薄明かりでもわかるぐらいに顔が真っ赤だ。

「それはその……、やっぱり仲間だし……」
「ははは、勘弁してくれ。それ以上聞きたくもねぇ!」
「何が言いたいの?」

怒った顔はマリンがふくれたのと同じ位におもしろいぞ。

「お前さんたちと同じで、シドはシエラさんに恋してるのさ」
「やだ、バレット……」

オレは今でもミーナに恋してるんだ

「だからオレがシエラさんを、すきだなぁっていうのは、な。」
潰しすぎた豆をわしわしと口に運んだ。
「でも、シドのあの怒りようったら……何なの?」
「そらもう、恋する男の哀しいところよ」
懐かしいな、オレにもあんな頃があったか、なぁ、ミーナ。
遠くを眺めたバレットの顔にきっ、と、尖った視線が突き刺さった。
「や!バレット、食べながらお話するのは止めなさいっていつも言ってるのに!」
ぽろぽろこぼれた豆のカケラが髭に引っかかっている。
しょうがないわね、と、ちまちま口に運ばれてしまった。白い指先に唇を弄ばれたバレットは、頭が白くなるのを必死でこらえた。
「……!……いかんいかん、もうネンネの時間だ」
「あら、帰っちゃうの?」
「たらふく食ったら寝る!これに限るぜ。」
「……おやすみなさい」

気付かれなかったろうな、……涙が出ちまった。
ミーナ・・・オレを・・・お前への想いでいっぱいにしてくれ・・・
心がスカスカしてきたんだ・・・どんどんお前が・・・この手の中から!
でないと・・・
オレは!
そんなはずが・・・
オレの女房はお前しかいねぇんだ!
頼む!ミーナ・・・オレの中をお前でいっぱいに・・・してくれ。
ミーナ・・・