< 三角関係  

「三角関係?」

 しかし調子がわるいぜ、シエラのやつめ。クルーどもを手なずけやがっさっき見かけたらエンジンルームで嬉しそうによ、けっ。ススで顔がまっくろじゃねぇか。クルーどもも何でぃ、口を開けば「シエラさん」だぁ?艇長はこのオレ様だぞ!だがよ、確かに安定が良くなってるな。加速しても落ち着いて飛んでいるし…くそっ、面白くネェ。

「艇長さんよ、気分はどうだい?」
弾丸オヤジか、ムスメの自慢話でもする気か?
「あんな有能なメカニックさんはそういねぇな」
「誰が有能だって?」
「へっ、とぼけるんじゃないよ、エンジン系だけかと思ったら銃火気系までカバーできるなんて、ビックリだ」
「なんだ、てめぇまでシエラ、か」
「AMキャノンの命中率を110まで持っていくとはありがてぇ」
「あれはシエラのシュミさ、顔に似合わずコワイ女だぜ」
「だよな、美人さんだ」

フン、コブ付きバツいちが!目つきが悪いぜ。

「なあ、シド。シエラさんをどうするんだ」
「お?」
「クルーとしてついてきてもらおうぜ、シエラさんは戦力だ」
「冗談じゃねぇ、ロケット村に着いたら船から下りるよ、あいつはさ」
「ふふ、自信満々ってわけだ。『オレ様の帰りを待っていろよ』ってか?」

コノヤロウ、喧嘩売る気か!

「顔色が変わったぞ、図星だな」
「へん、足がうずいたんでぃ、だいたい何が悲しくてオレ様がアイツを束縛せにゃならん?8番ボンベのことはきっちり謝ったから、アイツももう負い目を感じちゃいねぇさ」

シエラが調整したというギミックをシドの目の前に突き出しすと、バレットは珍しく神妙な顔になった。2人の間に緊張が走った。

「おい、タバコの火が引火しても責任持てねぇぜ」
「…………オレはミーナの手を離しちまった……ミーナはいつも待っていてくれた、だからあの日も当たり前に出かけて、それっきりさ。まさか村ごと 焼き討ちに遭うなんて、誰も思わないさ」

そう言えば、ティファが話していた。

「昔話なんざ、聞きたくねぇぜ。どうした?アバランチのリーダーも里心がついたか!」

でっかいため息をついたバレットはシドの挑発に乗ってもこない。

「本当に大事に思うひとは、しっかりつかまえておかねぇと……」

 

「艇長、こちらでしたか。クルーとの打ち合わせです、おこしください」

村では見せたことのないスバヤイ働きだぜ、シエラ。確かに有能なメカニックだよ。

「あ、バレットさん。補給の間にギミックの基底部を修理したほうがいいですよ。腕への負担が軽くなりますから。後で私の工房で直しましょう」

途端に元気よくバレットがシエラのもとに歩み寄った。大きな体がシドの視界をさえぎった。

「嬉しいねぇ、やっぱり時代は禁煙だ!」

振りかえってにやりとシドにガンを飛ばすと、ここぞとばかりにたたみかけた。

「シドもスパスパ煙を吐くのをやめたらどうだ?きっとメンテナンスしてもらえっぜ」
「やかましいや!!!おい、シエラ!!打ち合わせだろうが、行くぞ!」
「おおこわ。シエラさん、あんたも因果だね」
「すいません、バレットさん。艇長もあと10本タバコを減らせたら、体にいいんですけど。着陸したら工房に…!」
「シーーエラっ!いつまでムダ口叩いてやがるんだ!!!用があんだろ、さっさとしろい!」
「ごっ、ごめんなさい。バレットさん、ではあとで」

 

 

「どうぞおかけになって、スグ済みますから」

本当にスグ済みそうな手さばきで、見とれちまった。

「すきなんだな……」
シドをよ。

「女のくせに、変でしょ」
変なもんか。

「変わったものがすきになっちまう、ってやつだな」
「丁寧にむきあうと応えてくれます」
言ってやれよ、そのまんま。
「なぁ、シエラさんよぉ。艇長だが……」
痛そうじゃないか、足がよ。ジャンプできるか?
「まっ、これ痛くなかったですか?ここ!」
「うぉっ!ど、どうなってんだ!」
「サイズがふさわしくないんですよ。ホラ」
「イテテイテ……」
「どうですか、いくらかマシになりましたか?」
あっという間に違和感がなくなった。 こりゃ、有能なエンジニアさんだ。

「ありがとうよ、シエラさん。おかげでばっちりだ。そうだ、この先も一緒に船に乗りこんでくれると心強いんだが、ダメかい?」
「…………私は、」 
 おっ、いけねぇ。シエラさんを困らしちまった。オレもまだまだか。
「私、ノロマですし。艇長を怒らせてしまうから」
まったくあのヤロウの態度だけは、許せねぇ。
「はは、そうだな、シドは気短で口が悪くていけねぇや。あんなヤツ、もう気になんぞしてやるな」

ふと、シエラの手が止まってしまった。フォローになってなかった。
「私、ちょっと出過ぎたマネをしたみたいです。船の手入れなんて誰でもできるのに、あれもこれもって。艇長、怒ってました」

ひっそり微笑むシエラの横顔は、恋する乙女だ。シドの野郎、知らねぇぞ。ほったらかしといて、泣きを見せてやろうか。
「シドは幸せものだぜ。心配してくれる人がいるんだからな。きっと生きてかえってくるさ。オレがいるから安心していいぜ」
シドなんざ、どおなってもオレの知ったこっちゃないが、シエラの悲しむ顔は見たくねえぞ。おお、いけねえ、いきなり呼び捨ててしまった。勘弁してくれ、シエラ。
「ありがとうバレットさん。艇長のこと、おねがいします。強がっていますけど、足はかなり痛いんです。ああいう人だから無茶するのに決まってる……」

その笑顔、無理に作ってるな。

「バレットさんがいてくれれば私も安心です、さ、できましたよ」

もうおしまいかよ、手際良すぎるぜ。残念… ふん、オレはいつでも「いい人」さ。まかせときな、シエラさん。