旅の途中

Blind

 

まばゆい光
次々飛び出す、見たこともない巨大な化け物――後でウェポンだと知った――からの衝撃波  脳味噌が湧き上がるかと思った、北の大空洞から放出されるエネルギー

目の前が真っ白になる

急速離脱を試みる飛空艇のデッキは修羅場と化した。

あのエネルギー放出を一番近くで生で体験させられたわけだ。他の仲間のことまで気が回らなかった。吹き飛ばされようとするティファの手首を捕まえるだけで精一杯で・・・

 

ボーンビレッジを眼下に見る頃、飛空艇はようやく安定航行に入った。腕の感覚がなくなるほどしがみついていたデッキの手すりは、ギミックのかたちに凹んでいるみたいだった。左腕に抱えているのがティファだと気づくまで一分ぐらいかかったように思った。
何をしていたのだろう、思い出すのにもう一分。
唇がわなないて言葉が出ない。
「おい、」
悲しみに歪んだティファの顔に、あまり思い出したくないことを思い出した。
「ティファ、」
声が震えた。
肩をたたいても、頬をさすっても、その苦痛に満ちた表情は変わらない。
唇を凝視する、微かに息をしている。胸元に注目する、僅かでも動いている。
「よかった・・・」
口にしないといられなかった。

「気を失っているだけだな」
冷徹な声に、自動的に怒りが湧き上がった。白いスーツに身を包んだ金髪の青年は無表情に、そのくせ口元だけ微笑んでいた。スキンヘッドの大男を従えた尊大な態度は年齢に不似合いに思えた。
「おまえたちにはこれからいろいろ役目が待っている、さあ」
立て、スキンヘッドの大男がバレットに迫った。
「・・・・・・・・・・・・その娘は預かる」
しかしバレットは不敵な笑みを浮かべて右腕を小さく構えた。銃口の先には金髪の青年、神羅社長ルーファウス。
「この銃だけは取り外しできねぇんだ」

 

 

背中に銃をつきつけられながらも、バレットは最大限の譲歩を引き出した。牢屋ではなく、医務室に監禁させることに成功した。気を失ったティファをベッドに寝かせ、柔らかい毛布でくるんだ。
体温が下がっていたからだ。
何度かやってきた医者は、手荷物だけを取り上げて追い返した。おかげで水と食糧を手に入れた。もちろん付き添いの警備兵に毒見をさせるのは忘れない。

「ルードさん、あのこわい男が診察も何もさせてくれないんですよ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「次は誰か他に頼んでください、私はもう嫌です!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「あんな目つきの犬に噛まれたヤツがいるんですよ!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

大きな窓からさしこむ妖しい光、赤くただれて夜空を焦がす星、メテオだ。
「本当に星の危機だ」
昨夜よりもまた大きく見えるようになった。ブラインドを割って覗くバレットの目に写りこむ星。

あの野郎がやったことだ・・・
とことんハラを立てたいのに。
バレットは寂しげに、目を醒まさないティファを見た。
時々、うなされて口元からこぼれる言葉がバレットを悩ませるのだ。

「・・・クラ・・ド・・・・・、ク・・・ラウ・・・」

また呼んでいる、あいつを。

静かにベッドに近づき、ティファの顔を見た。

まえがみにそっと触れる。
そのまま頬に指を滑らせた。
唇に触れようとしてやめた。

この唇が、アイツを呼ぶのか。

アイツはお前の何だ?
一緒に星を救う仲間か?
信頼できる恋人か?
愛してるか?
抱かれたのか?
オレたちを裏切ったんだぞ。
お前をこんなに苦しめて。
星を傷つけてるぞ。
元ソルジャーだぞ。
セフィロスってやつの子分だぞ。
エアリスを切り殺そうとしたぞ。
なぁ・・・
あいつはよ、
あいつの中はよ、
エアリスでいっぱいだぞ。
お前の入りこむところはよ・・・
あんな奴のために
お前が傷つくなんてよ、変だ。
あいつはよ、
もう、
お前の知っている幼なじみじゃねえんだ、多分。
ピンチのときに助けてくれはしねぇんだ。

「・・・けて・・・、たす・・・て・・・」

苦痛に顔を歪めるが、目を醒ましてはくれない。
バレットはぎくりとした。
声にできない声が届いたのかと思った。
落ちそうになった毛布をかけなおして、
一瞬だけティファの手を握りしめた。

そして静かに胸のうちを確認した。

やっぱりあんなヤツには任せておけない。
オレはこの子を・・・守る。
でなければ、この子は壊れてしまう。
オレの大切な、この子が。