Candle on the Water

本当にこれで良かったのだろうか。

夜中にまた目が覚めたバレットは、傍らで眠る愛妻の寝顔をぼんやり見て思った。掛け布団を強奪されてしまうから、寒くて気がつくのだ。日に日に膨らんでくるお腹に遠慮して、ベッドから落ちたこともあった。かといって別のベッドに寝る気は毛頭ない。

妻の名を口に含んでみた。

「ティファ・・・」

黒髪をやさしく撫でてみた。ふっくらとした頬にそっと触れてみた。鼻の奥がツンとする、女房・・・お前が・・・。この子はどんな思いでオレなんかを選んだというのだろう。バツいちで、子持ちで、15も歳が離れたおじさんで、何のとりえもない醜男のオレを・・・それより、オレはこの子の思いを、こうもあっさり受けとめて本当に良かったのだろうか。

コレルに戻る船にまさかティファが乗ってこようとは、本当に驚いた。そのうえ、オレの横で、オレの子を宿して、こうして・・・すやすや眠るようになるとは、いくらオレでも思い及ばなかった。

ぼろい空家にとりあえずマリンとティファの寝床を確保したコレルの第一夜、ティファがアイツとの別れを話してくれた。
「バレットにだけは、話しておきたかったの・・・」
ティファはそう語りだした。

星を救ってロケット村に戻ってから、クラウドは体じゅうについた傷をティファに見せた。
「俺の中のジェノバがすぐになおすんだ、ちょっとは痛いけど。」
だから、多分、自分は簡単には死なない体だ。
「不死身・・・ってわけだ、」
ティファは事実を言っただけだ。
怖いだろう、その問いかけにクラウドは、はっきりと狼狽の表情をみた。

それで自分たちは終わったと、ティファは淡々と語った。エアリスのことを差し引いたとしても、お互いを信じたい気持ちがこんなにぐらぐらだったと思い知らされては、これ以上前には進まないと二人納得してしまった。

だから終われた、ティファは泣かずに話した。別れというより、終わり、だったとオレに気遣ったかもしれないが、ティファはそう言った。そして、「聞いてくれてありがとう」と、話を結んだ。

それから、思いつめた目に見つめられた。

そのとき、オレは視線に応えることはできなかった。いや、引力に逆らったというのが正解だった。必死で我慢した。オレだって男だ、ティファが何を望んでいたのか分らないわけがない。けれど、ここで一緒に暮らしたいためだけに、既成事実とばかり、身を投げ出すようなマネには応えるわけにいかなかった。
なぜ?
それは・・・惚れた女の弱り目につけ込むなんてことは、したくないからだ。だから、我慢した。でもあれでよかったんだ。

すっかり元気になったティファが、プロポーズしてくれたからだ。
「およめさんにしてくれる?」
あんまり嬉しかったから、オレは一にも二にもなくティファを「およめさん」にしてしまった。
ザンカン先生から託されたころ、恐怖に震えて怒りを顕わに、オレの腕を噛み裂こうとさえしたあの少女が、同じ腕の中で、穏やかにオレを見上げていた。
誤算があったとすれば、オレの体でティファの体にひとつ傷をつけてしまったことか・・・。

クラウドのやつとは、遅かれ早かれ、終わるとわかっていたんだ。

エアリスに死なれた夜からだ。
あいつは、ひとりで世界を敵に回したように振舞いだした。
ろくに食べもせず、まともに眠りもしなかった。
今思えば、やつの体内にあるジェノバがしていたことだった。
そんなこととは知らないティファの心配にも、
寂しく笑って「ティファ、ありがとう・・・」
そう言うことしか、あいつにはできなくなっていたんだ。

いや、あながちジェノバのせいだけではなかった。まわりのオレ達のことがもう見えないほど、あいつは思いつめてしまった。エアリスを死なせたのは自分のせいだ、失ってからエアリスがどれだけ大きな存在だったか思い知らされた・・・。それで、ティファも気づいたんだ。クラウドが自分のことを特別な存在だとはこれっぱかしも感じていなかったことに。ついでに、自分もクラウドを「すきだ」と断言できないでいたことにも。

打ちのめされる、そう、ティファは打ちのめされたのさ。いつも明るくて、すぐに皆の人気者になれたティファは、自分から誰かを好きになったことがなかったんだ。笑顔を取り戻した七番街で、若い衆が取り巻いているのを見てそう思った。本人はそんな気が更々なくたって、「お姫様」になってしまう女の子がいるだろう、ティファはそういう子なんだ。
初めて自分の恋心に気づかされた瞬間、それはクラウドがエアリスのためにぼろぼろ泪を流したときだったなんて、残酷なものだ。
あのときティファは初めてクラウドに恋をしている自分に気がついて、次の瞬間「大失恋した」・・・そう言っちゃあ身もフタもないが、まったくその通りだった。見ていてあんな辛いことはなかった。寄り添うほどに、互いを傷つけてしまうなんて。くそ、それもこれも、みんな神羅のせいだ!今でも腹が立つぜ。

でも本当によかったのか・・・ミーナへの想いを引きずっているってことじゃあ、オレもクラウドと変らなかったんだ。オレもまた、ティファを知らず知らず傷つけていなかったか?いやむしろ、分かったような顔してるぶん、オレのほうがずるい。オレは、罪滅ぼしでこの子の願いに応えたのだろうか。

ちがう、それは違うぞ!

今だから言うが、オレはずっとティファが大好きだった。
まだアバランチがビラ撒きなんかをしていた頃から、ティファが大好きだった。
荒んだ心が洗われていくような、穏やかな日々だった。
覚えてるか、マリンと三人で歩いていたら家族連れに間違われたな。このまま何事もなかったかのように、ひっそり暮らそうか。そんな想いすら過ったんだ。

お前が笑うと、こっちまで嬉しくて。
お前が泣くと、オレも身を切られるほど切なくて。
お前が腹を立てると一緒になって怒っていた。

マリンと、ティファ、おまえたちだけを守って生きてゆこうか、
・・・すごく心地よかったんだ、お前といることが。
いやそれも違う、ティファがクラウドを連れてきたときからだ。
ザンカン先生に頼まれたんだからな、変な虫などついてたまるもんか!
そうさ、クラウドは、アイツは虫だ!ティファの心を乱す虫だったんだ!

いちばん乱されていたのは・・・このオレか・・・

とにかく、受けとめたのはこのオレだ。

このごろになって思うんだ。オレはミーナに愛してもらったから、お前を愛したいと思えるんだと。人を愛するってことの良さを初めて教えてくれたのはミーナなんだ。ミーナと出会えたらお前とも出会えたとさえ思うんだ。
ティファ、お前と暮らしたいと思うのはきっと、ミーナからの贈り物なのさ。
だから、これでいいんだよ。

 

I'll be your candle on th water
My love for you will always burn
I know you're lost and drifting
But the clouds are lifting
Don't give up, you have somewhere to turn

I'll be your candle on the water
Till every wave is warm and bright
My soul is there biside you
Let this candle guide you
Soon you'll see a golden stream of light

A cold and friendless tide has found you
Don't let the stormy darkness hold you down
I'll paint a ray of hope around you
Circling in the air, lighted by a prayer

I'll be your candle on the water
This flame inside of me will grow
Keep holding on,you'll make it
Look for me reaching out to show
As sure as rivers flow
I'll never let you go
I'll never let you go
I'll never let you go


オレはお前の水辺のろうそくになろう
いつまでも燃え続けるお前への愛だ
道に迷い漂うおまえ
けど雲は晴れた。
あきらめるな、行き場はある!

オレはお前の水辺のろうそくになろう
波を暖め明るく照らす
オレの心はお前のすぐそばにあるから
このろうそくがお前を導く
もうすぐ金色の光が見える

冷たく意地悪な潮につかまっても
荒れ狂う闇に負けるんじゃねぇ!
お前を包む希望の光は
輪を描き 祈りに明るくなる

オレがお前の水辺のろうそくだ。
この炎はもっと強く燃え続ける、
お前も手伝うんだぞ
オレの手はここにある、安心しろ。
お前に教えたいんだ
川の流れが止まらないのと同じで
オレはお前を離さない
お前をどこへも行かせない
オレはお前を離さない

Words and Music by Al Kasha And Joel Hirschhorn
(訳 シエラ)