空のスペシャリスト

ksyana

 

「こんにちは。シドおじちゃま。」と、えらくお洒落な格好でドアを開けたのはシエラの友人、クシャナの愛娘・コシャナだった。
俺様はいつものようにダイニングの椅子に腰をおろし、新聞を読みながらタバコをふかしていた。
「おじちゃま。タバコは体に悪いのよ。」
「はっはっは!しばらくあわねえうちにずいぶんとカタイことを言うようになったじゃねえか。
それは母ちゃんの受け折かあ?!」
俺様がそう言うと、コシャナは黙って俺の顔をじーっと眺めていた。

「あのね。コシャナね、シドおじちゃまに教えて欲しいことがあるの。」と、ちょっと困ったような照れたような表情になる。オンナも3歳を越すと、色気付いてきやがるぜ。
「なんだ。俺様でわかることならなんでも教えてやるぜ。」
そう言うと、にこっと笑う。

「あのね・・・。お空の飛び方を、教えてほしいの・・・・・・・。」
「ほ〜〜〜〜〜〜〜〜〜う。」
俺様は、黙ってまた一本タバコに火をつけた。

「あのね、コシャナはね、大きくなったら『まじょ』になりたいの。それでね、ママがね、おたんじょうびに『まほうのホウキ』を買ってくれたの。でもね、そのホウキじゃとべなかったの。『どうやって飛ぶの?』ってママにきいたらね、がんばってシュギョーすれば飛べるようになるんだって。だから、コシャナね、がんばって飛ぶ練習をしたの。でもね、やっぱり飛べなかったの。それでね、ママに『どうして飛べないの?』って聞いたらね、『だったらシドおじさんに聞いてごらん。』って言われたの。シドおじさんはお空のすぺしゃりすとだから、コシャナにお空の飛び方もきっと教えてくれるよ、って。だから教えて。シドおじちゃま。お空って、どうやって飛ぶの?」

まったく・・・。オンナってのはどうしてこう話が長いんだ!
・・・にしても、クシャナの野郎!俺様をダシにして子供の質問から逃げやがったな!クシャナじゃなくてクセモノとでも名前を変えやがれ!!
こんなに真剣な目で見られたら、適当にごまかすことも出来やしねえ!

と、困惑しているのがコシャナにも伝わっちまったらしい。

期待の眼差しが困った目つきに変わった。

「・・・おじちゃま・・・?」
「まあそう答えを急ぐなよ。そうか、空を飛びてえのか。そりゃあいい心がけだぜ。そうだな、あと10年ぐれえそのしゅぎょーとやらを積めば飛べるかもしれねえな。だがよ、今時その『まほうのホウキ』とやらでヘルメットもなしに空を飛ぶのはちっとやばすぎやしねえか?大事な髪も乱れるし、いいオンナが台無しになっちまうぜ。」

「そうなの?じゃあ、お空を飛ぶのはできないの?」
「まあそう焦るなよ。何も『まほうのホウキ』じゃなくたって、空は飛べるんだぜ。」
俺様がそう言うと、沈みかけたコシャナの瞳がきらっと輝いた。
「・・・飛べるの?」
「そうさ。たとえば俺様のハイウインド号はお前さんの『まほうのホウキ』よりもっともっと高いところにも飛べるし、スピードだって出るんだぜ。しかもホウキよりも安全だ。」
コシャナは俺様の話をちっちゃな頭で一生懸命に理解しようとしていた。

「シドおじちゃまの『はいんど号』がおじちゃまのまほうのホウキなの・・・?」
「またずいぶん端折ったな。そうだな。手っ取り早い話がそういうことだな。俺様にとってのハイウインド号が、お前さんにとっての『まほうのホウキ』、だな。」

「魔女もいいがな、大きくなったらパイロットになればいいさ。そうすればハイウインド号に乗れるんだぜ。」
「・・・・おじちゃまみたいに?」
「そうさ、俺様みたいに、だ。」

しばらく考えた後、コシャナが結論を出した。
「わかった!コシャナ、大きくなったらパイロットになる。そしたらね、シドおじちゃまも乗せてあげるね。」と、元気に言い放った。どうやら悩みは解決したようだ。
「ところでお前さん、今日はやけにおめかしじゃねえか。ひょっとして彼氏とデートか?」
コシャナは頭に大きなリボンをつけていて、服もピンク色のワンピースといういでたちだった。
「えへへ、今日はね、「ひちごうさん」に会いにいくんだって。」

 

「あ、ママが呼んでる。もう行かなきゃ。ありがと。シドおじちゃま。」と、来た時とは別人のように元気に部屋を出て行った。
「おう、またな!」
ドアがバタンと閉まる。
思わずふうーーーーっと大きなため息をもらす。
「ここは子供相談室じゃねえっての・・・。」と、後ろに反り返ってくつろいでいると、誰かが足元でズボンの裾を引っ張っていた。
見下ろすと、いつのまに中に入ってきたのか、コシャナの弟のマシャナだった。確か1歳を過ぎたころのはずだ。シドの顔を見ながらにた〜っと笑っている。
「よお、マシャナ。いいねえ、お前さんはいつも幸せそうで。」と、また一本タバコに火をつけた。
「・・・ところでお前は大きくなったら何になりてえんだ?」と、マシャナを抱き上げる。
するとにこっと嬉しそうに笑いながら答えた。

「・・・あいす。」

・・・やっぱりお前、コシャナの弟だな。

 

 

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