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おやきょうだいの縁のこと

精神疾患をもつKさんは、不安と喜びの混じる笑顔で新生活に臨んでいた。

部屋にかけるカーテンの色を喜んでくれた。私がお使いに行ってきたのよと告げると、はにかんだ笑顔で「ありがとう」と言った。

「精神病」はとくに変わった病気でもなく、誰だって罹るかもしれない疾病の一つだ。

正しい治療と服薬で、日常生活はある程度過ごせることも証明されてきている。

うちのように介護サービス付きの住宅なら、服薬管理を手伝わせてもらうことで可成りスムーズな生活が過ごせるものと、保証人の兄さん夫婦も期待していた。

しかし実際のところは、服薬管理に干渉されることを著しく嫌って、つまりは、薬を飲まないままに日を過ごしてしまった。あっという間に精神疾患、病気をコントロールできなくなり、私たちには見えないものや聞えない音がKさんを悩ますようになった。

1年たたずに、Kさんは精神科の病棟に収容されることになった。

金銭管理もKさんには困難なことであり、家賃を月々支払うことができなかった。

家賃の請求は毎月の保護費では足りず、年金を加えなくてはならない。隔月15日に振り込まれるので、翌月にいくら取り置く必要があるのかが理解できず、支払いは滞り追い詰められてしまった。

保証人の兄は通帳ごと管理を希望するが、当人が同意しないので、強制すると貧困ビジネスになってしまう。

保証人の兄は滞った費用の弁済を断った。法律的には逃れられないが、心からの叫びというしかなかった。

「妹のことはもう聞きたくもない、死んだときだけ連絡が来ればよい」

世の中にはたとえきょうだいでも、ほんとうにこのような関係もあるのだと、さびしく思った。

Kさんは入院してやがて半年。退院の見込みはないということで1月で退去となった。その際、兄さんに手続きを依頼する留守番電話をきいて折り返しの連絡を入れてくれたとき、

「いま酒を飲んでいる、大声も出すかもしれない。国会議員に知り合いもいる。裁判にでもしてもよい」

などなど、気の小さいことを余計に浮き出させるようなことを繰り返した。そして

「保証人は形だけ名前をいれたので、オレに責任はない」

と、通用しないことを繰り返すだけであった。

これでは妹のKさんは、永久に救われないとさびしくなった。

今までがそうであったように、これからも1日に2時間しか眠れず、げっそり痩せて、病棟内をあてもなく徘徊し続けて、一生を送るのだろうか。誰も見舞いに現れず、何だかわからない音やモノに怯えながら白い壁に囲まれて、ずっとずっと過ごすのだろう。

幸せになるために、等しく生まれてきた命であるのに、何がどうなって、そうなるのだろう。

 

 

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