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孤独死ということ

いつも騒々しくしているSさんが、前日からなかなか姿も見せない。

「爆睡かな、昏睡だったりして」

冗談混じりのそんな言葉もでるような、いつもそんな人だったから。

それにしても気になるので、スタッフが見に行くことになった。

訪室してすぐコール、様子が変。

駆けつけた施設長が行ってすぐ戻ってきて「もう固くなってるわ、全然」

新年早々、誰にも看取られず気付かれることなく、Sさんは短い人生を閉じていました。

ドア1枚隔てていても、年末年始関係なく、多くのスタッフが絶えず行き来していたのに。

誰にも看取られず。

40年に満たない生涯を終えていました。

問題はここから。この一大事に、家族といっこうに連絡が取れない。

両親も健在、すぐ近くに住んでいるのに、散々携帯を鳴らしているのに返信がない。普段なら着信にはすぐに気が付いてくれるお父さんなのに、こんな時に限ってこんなものかしら?

午後3時前に発見されて父親と連絡がついたのは午後6時。それも検死に立ち会った警察官が父親宅を訪ねてくれてから。その上、先に連絡をくれたのはその警察官。

私はそこで定時となり翌日は休みだったので、続きは明日聞くことになるわけだがまったくこんな人たちも存在するということを思い知らされた次第。

2,3日前頃から「電話にも出ないから様子を見て欲しい」と連絡をくれたのは、身内ではなく弟分。見に行ったら「寝てるときに勝手に鍵あけるな!こらぁ怒」という始末なのは以前から。

Sさんはそう望んでいた、うちのマンションの生活リズムは最期まで受け入れられなかった。だから障害者自立支援のサービスを利用しての生活なのに、サービス提供時間を守れなかった。

だから朝食に現れなくても、「寝てます」の札が出ていたのでドアを開けなかった。それでその頃は多分もう、息をしていなかっただろう。主治医ではないのに、私たちに提携してくださっている先生が「警察に連絡したほうがいいでしょうか」と相談をしただけにも関わらず、イヤな顔ひとつせず駆けつけてくれて、死亡診断書まで手配くださった。先生からの通報だったので、警察も粛々と対応してくれた。他の入居者様たちへの配慮も万全だった。

Sさんはこの先生に、丁寧に対応してくれた警察に、他の入居者様たちに、もう何の挨拶もできない。

血のつながりだけが家族ではないとはいえ、これまでのいきさつがいろいろあるとはいえ、取り急ぎ異変を感じ取ったのが弟分とはいえ他人さんとは。

スタッフの多くは現場経験を積んだベテラン揃いで、ドキドキしているのは私だけだったが、それも含めて皆さん心得ている。いたづらに事を荒立てたり騒いだりしない。第1発見者となってしまった年若いサ責嬢への対応や、関係各方面への適切な連絡も、もはや気持のよいものでした。

おかげで素人の私も、次第に平静を取り戻し、なすべきことをすることができたのです。

このように文章に残せているのです。

いろいろ考えをまとめて、人の命や関わりについて考える余地ができたというものです。帰宅後家族にあれこれ喋ることをせずとも、事態を受け止めたりできました。

よく報道されている、孤独死をこんな身近で見ることになるとは、むしろ貴重な体験です。

Sさんについて、思うところはいろいろありますが文字にあらわすのはまだ早いでしょう。直接接していた現場のスタッフの、その表情から「ほっとした」気持ちがありありと読み取れました。

「いい勉強させてもらったわ」と、即刻感想を述べている者をいたほどなので、そういう方であったわけです。

実際、辛抱強く接してきたスタッフの第一の感想はその通りですが、亡くなっているのを発見されて警察が来るまでの僅かな時間のうちに、このように言われる命とは!

 そのスタッフは続けてこうも言う。「これはSさん望んでいた結果とちゃうか、そうかもよ」

・・・続きはこれからちょこちょこ、話します。

 

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